ブラックキャットの育て方
育てる環境について
ブラックキャットは温度や湿度、日光といった環境に左右されやすい植物で、環境によって状態を変え、状態によって管理の仕方が異なります。そのため、適切に管理するにはその特性をよく理解して環境を作る必要があります。植え方は寒さや直射日光から守りやすい鉢植えが一般的で、
土は水はけの良い肥沃な土が適しています。基本的な特性として、高温多湿を好み寒冷と乾燥を嫌います。また、日光は好きですが直射日光を嫌い、直射日光に晒されると葉焼けを起こすことがあります。そのため、基本的な育て方としては、直射日光の差さない明るい日陰に置き、
土が乾かないように水をやりながら育てていくと良いでしょう。木漏れ日やレースのカーテン越しの明るさぐらいは構いませんが、西日には注意が必要です。また、温度に関しては、15℃以上の環境であれば常に緑の葉を保ち、20℃以上では常に花を咲かせるようになります。
15℃以下の低温下では地上部が枯れてしまうので、最低でも常に15℃以上に保たなければいけません。そのため、家庭での育て方としては、花茎は花が終わって実が落ちたら花茎を切り落として葉だけの状態にして、晩秋から春にかけては室内など暖かい場所に置いておくようにしましょう。
もし地上部が枯れてしまっても、根が生きていればまた芽を出します。その場合の育て方も同様で、暖かい場所に置いて待つのが良いでしょう。葉がある時とは逆に水やりを控えて土を乾き気味にし、5℃以上の環境に置いておきます。ただし乾燥が嫌いな特性はそのままなので、暖房の風が直接当たるような環境は避けましょう。
無事に冬を越して4月下旬になったら、必要に応じて株分けや植え替えをして鉢の中のスペースを確保しておくと、根詰まりを避けることができます。また、この時古い葉も一緒に落とし、全体の葉の量を3分の1程度まで減らすようにしてください。新しい葉や根に栄養が行き渡るようになります。
種付けや水やり、肥料について
ブラックキャットは種から育てることができますが、元々流通が少ない希少種のうえに、種の一般流通は特に無いに等しく、購入する場合は鉢花か苗の形での入手が一般的です。植え付けや移植の際に気にしておきたいのは植木鉢のことです。イモの仲間なのでそれなりの大きさの塊茎ができますし、
地下茎を張り巡らせやすいように広さと深さに余裕のある植木鉢に植えた方が良いでしょう。素焼きの植木鉢であればある程度の通気性を確保することもできます。土は水はけの良い肥沃なものであれば種類は問いません。専用のものは販売されていないので、一般的なガーデニング用に配合済みの土でも構いませんし、
自分で培養土を作っても良いでしょう。室内で育てることを見据えて、水はけの良い鹿沼土と有機質に富んだピートモス、水はけにも保水にも優れたバーミキュライトを等しい量で配合します。腐葉土はカビが生えやすく適さないので使わないようにしましょう。増やす目的で種から育てる場合は特に土を清潔に保つ必要があります。
水やりは土の表面が乾いたら溢れるほど与えるようにします。もともと水を好みますが、開花中は特にたくさんの水を欲しがるので、やり過ぎない程度に様子を見ながら与えましょう。土だけではなく周囲全体が湿潤な環境を好むので、根元だけではなく葉や周囲にも水を噴霧するとより活き活きとします。
ただし、冬場は室内でも気温が下がって活動が鈍るので、水やりも少し控えめにしましょう。室内での育て方としては、根よりも葉の乾燥によるダメージが懸念されるので、霧吹きでこまめに葉に直接水を与えるとよいでしょう。
葉が枯れて地下茎だけの状態になったらさらに活動が鈍るので、むしろ土は乾き気味なくらいで構いません。温度にだけ気を付けましょう。肥料は窒素、リン酸、カリウムが含まれるものを株の周りの置くようにして与えましょう。
増やし方や害虫について
ブラックキャットの増やし方には株分けと種からの育苗の2種類があります。育苗は手間も時間もかかるので、株分けの方がより速く簡単です。株分けは4月下旬に地中の根茎を切り分けて行います。切り分ける時には根茎から芽が出ているかどうかを1つずつ確認し、
分かれ目に沿って包丁などで分けていきます。その後、苗と同じ様に植え付けてください。種から育苗する場合は非常に手間がかかります。種は花が終わった後の実から採取できるので、自然に実が落ちるのを待って種を取り出します。液状の果実なので、2~3日ほど天日干しして乾燥させてください。
植え付ける前には、人肌程度のぬるま湯に24時間漬けます。魔法瓶などを用いて保温状態にすると良いでしょう。トレーやポットなどに水はけのよい清潔な土を入れ、種を蒔いて薄く土をかけ、適温の水を十分に与えてからーラップやビニールで軽く覆います。
この時の水の温度は25~30℃程度です。その後、発芽温度である25℃~28℃の温度を保てる明るく湿潤な空間で、毎日適温の水を霧吹きで与えながら発芽まで待ちます。発芽まで短くとも1ヶ月、長ければ1年近くかかることもある根気のいる作業です。無事発芽したら本葉が出るまで待ってから植え替えます。
この種の発芽率は種の新鮮さに左右されます。新しいものであればあるほど発芽しやすいので、育苗に挑戦する場合は種の採種が終わり次第育苗に取り掛かると良いでしょう。保存する場合はよく乾燥させ、湿気のない清潔な場所で保管するようにしてください。
ひとつの実から採種できる種の数にはバラつきがありますが、多ければ数十個ほど採種することができます。ブラックキャットには脅威になるような病害虫は特にはいません。強いて言うなら、性質上夏場にたくさんの水分を含ませることになるので、土にカビが繁殖しないように清潔に保つことにだけ気を付けてください。
ブラックキャットの歴史
ブラックキャットはインドおよび東南アジアを原産地とする植物で、熱帯・亜熱帯の森林の中を生息地としています。外見が大変特徴的で、花より大きく広がる先端が尖った苞葉の中央に小さな花を複数つけ、花をつけなかった花茎は花の両脇から糸状になって垂れ下がります。
花の色は黒っぽい紫色で、その色と苞葉と花茎の様子が長い髭を生やした黒猫の顔のように見えることが、ブラックキャットの名前の由来となっています。他にも、苞の形を大きく広げたコウモリの羽に見立てて「バットフラワー」、あるいは「デビルフラワー」とも呼ばれます。
英名では「ブラックバットフラワー」といいます。このように様々な名前で呼ばれる植物ですが、学名は「タッカ・シャントリエリ」といいます。この植物はタシロイモ科タシロイモ属に分類されているイモの一種です。原産地では「タッカ」という名で食用植物としても古くから親しまれてきました。
タシロイモ科の塊茎はデンプンを豊富に含むことから原産地における貴重な栄養源として重宝されています。さらに、薬効を持つことから中国では胃潰瘍や肝炎などの薬として用いられています。また、日本には植物学者の田代安定氏が台湾を経由して初めて持ち込んだことから、和名ではクロバナタシロイモ(黒花田代芋)と呼びます。
そのユニークな外見や大きく広がる深緑の葉の美しさ、適切に育てれば長く楽しめる多年草であることなどから観賞用としても適しており、日本各地の植物園で栽培されているほか、少数ではありますが家庭園芸用の鉢花や苗も流通しています。流通名はブラックキャットまたはタッカ・シャントリエリが一般的です。
ブラックキャットの特徴
園芸分類上は熱帯植物に属する、草丈70cmから1m程度の多年草です。開花する時期は7月から10月と長く、十分な給水と適切な温度管理の下にあれば一年中開花します。常緑性で高温多湿を好み、花を咲かせない時期でも暖かい環境であれば緑の葉を保ち続けます。
逆に寒さには弱く、冬場などに低温環境に晒されると地上部を枯らし、地下茎だけの状態になって冬を越そうとします。そのため、一年中楽しむには寒冷期になったら特に気を遣う必要があります。耐寒性の低さを除けば生命力が強く丈夫な植物ですし、多年草なので、
もし冬に枯れて地下茎だけになってしまっても、きちんと管理してやれば適温になり次第また地上部の茎を伸ばすようになります。15℃以上の環境でよく生長するので、寒冷地の野外での栽培には適しません。野外での栽培を考える場合は、日本では関東以南の地域が望ましいでしょう。
また、もとは深い森林の茂みの中を生息地としていたので、高温には強いものの直射日光は苦手です。温暖な地域でも直植えするときには注意する必要があります。このように性質もユニークですが、ブラックキャットの最大の特徴はやはりその外見でしょう。
黒猫の顔にもコウモリの羽にも見立てられる独特な苞葉は花の蕾を保護する役割を持つ部分です。紫がかった褐色または暗褐色で、風車のように花の背後に広がります。花は濃い紫または黒で、小さく苞葉の中央に固まってひっそりと咲き、
花をつけることなく伸びた花茎の方が数も多くよく目立ちます。そのため、一見すると苞葉の部分が花弁で垂れ下がった花茎がめしべの部分であるかのようです。サトイモに似た大きな深緑の葉も艶やかで美しく、見る人の目を楽しませてくれる植物です。
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