エイザンスミレの育て方
エイザンスミレの育てる環境について
スミレ類にはさまざまな品種がありますがその品種によって育てやすい環境が異なってきます。半日陰を好む品種としてはアカネスミレ、アリアケスミレ、マルハスミレなど、日なたを好むものにはアナマスミレ、アツバスミレ、イソスミレがあります。
このエイザンスミレはヒカゲスミレなどとともに日陰でも元気に育てることができる耐陰性のあるスミレです。エイザンスミレが咲いているのは明るい森林の樹木の下や道端、あぜ道など、人の手が入った木陰となり、直射日光が当たりすぎない場所です。
また、肥沃で湿り気がある場所を好み、明るい日陰でもしっかりと育つことができるのが特徴です。バラのように一日中日光が当たる場所ではなくても十分育てることができ、明るい北向きの庭などもエイザンスミレが栽培しやすい場所と言えるでしょう。
エイザンスミレは寒さに耐性があるため、屋外管理で冬越しもできますが、夏の暑さに弱いのが特徴です。夏の暑さに弱いので、直射日光が当たり過ぎる場所などでは枯れてしまうことがありますので注意が必要です。そのため地植えにせずに鉢植えで管理して、
夏の暑い時期には半日陰に移動させるのが上手な育て方のコツと言えます。鉢植えにすることで春先は日当たりのいい場所に移動させ、夏になれば、日陰の涼しい所で管理して強い株に育てることができます。そのため、エイザンスミレは盆栽用として育てる愛好者も多い品種です。もちろん地植えでも環境が合えば自然に増やすこともできます。
種付けや水やり、肥料について
エイザンスミレはタネを作り増えていくことができる植物です。花が咲き終わると自然に種が熟して周りに飛ばし、新しい芽が出てきます。鉢で管理するときには花にあらかじめ茶こし等の紙袋をかぶせておくことで種を採集することができます。エイザンスミレは乾いた半日陰によく生息しています。
そのため水やりもあまりしすぎると根腐れを起こしてしまう可能性があるので、表面が乾いたらたっぷりと水やりをするようにしましょう。表面しか湿らない程度の水やりですと、根が表面に集まってしまい丈夫な株に育ちませんので、しっかりと鉢ぞこから水が出るまでたっぷりと水やりをします。
そして再び乾いてきたら水やりをするようにしましょう。ただし夏の暑い時期はエイザンスミレがもっとも苦手とする時期です。朝夕水やりをし、葉や周りにも打ち水をして涼しさを作るためにも水やりをしましょう。エイザンスミレはあまり肥料をやらなくても元気に育つ植物ですが、
植え付けの際には用土に緩行性の肥料を鋤こんでやることで丈夫な株となります。その際は窒素分の多い肥料だと弱くなってしまうので、カリウムやリン酸の割合が多い肥料を選ぶのが良いでしょう。
赤玉土と腐葉土で水はけの良い用土を作り、そこに緩行性肥料を鋤込んで植え付けましょう。その後1ヶ月に一回程度液体肥料を希釈してやります。その際にも窒素分が少なくリン酸、カリウム分が多い液肥を選ぶことで花つきが良くなります。
増やし方や害虫について
エイザンスミレの増やし方で最適なのは株分けです。3月から5月頃、または秋頃になったらポットから株を抜き、分かれ目のところで二つに切り取ります。その際に古い根や傷んだ根を取り除いてやり、赤玉土や鹿沼土、腐葉土を混ぜた用土に植え付けましょう。
スミレは株の寿命が短い植物なのであらかじめ、株分けをしておくことで株を絶やさず管理することができます。また株分けの他にも実生でも増やすことができます。花が咲き終わると実が熟し、種を飛ばします。地植えにしておくとどんどん種が飛んで環境が合えばたくさんのスミレの花を咲かせることができます。
鉢植えの場合にはあらかじめ種が飛ぶ前に株に袋をかけて種を採取するのが良いでしょう。一度寒さに当てると発芽しやすくなるので冷蔵庫で管理して1月くらいに植えることで発芽して増やすことができます。その他に春の勢いのある時期に茎をカットして湿らせた鹿沼土に挿し、発根させて増やすこともできます。
このようにエイザンスミレは実生、芽さし、さらには株分けで増やすことができるので、初心者の方でもたくさん増やして鉢植えや庭植えで楽しむことができます。株の寿命が短い分、保険の意味でもこのようにして増やしておきましょう。
害虫としてはツマグロヒョウモンの幼虫がつきやすいです。スミレの仲間に付きやすい害虫であっという間に葉を食べ尽くしてしまうので、見つけ次第捕殺することが大事です。スプレー式の殺虫剤などを定期的に散布するのも予防になります。
エイザンスミレの歴史
エイザンスミレは多年草のスミレの仲間ですがこのスミレ属は広く世界中で愛されている花です。エイザンとは比叡山を指し、この比叡山延暦寺の辺りに自生していたことからこの名前がつけられました。スミレの仲間は日本でも広く愛されて着た歴史があり、
日本最古の歌集である万葉集にも須美礼久佐として登場するほど古い歴史があります。また最も有名な家人の一人である松尾芭蕉もスミレの花を愛し、度々歌に詠んでいます。スミレは日本だけでなく世界中で古くから愛されており、ギリシア神話にも美しい乙女の象徴として度々登場しています。
また古代ローマ時代にはバラとともに最も貴重で愛すべき花としてスミレが人気を博しました。香りも良いことから香水としても使われましたし、その薬効から二日酔いを防ぐとしてお酒を飲む際の盃にスミレを入れたとも言われています。
スミレはその花の可憐さだけでなく、ハーブとしても好んで使われました。またうつむき加減で咲くその可憐さから聖母マリアの象徴、純潔の象徴としても親しまれてきました。そのようにしてヨーロッパでは古くからスミレを栽培して利用する習慣がありました。
フランスではナポレオンとその妻ジョセフィーヌもこの花を愛し、ナポレオンを支持する人々にとってこの花は象徴となりました。スミレの花は砂糖漬けとしても人気があり、子供からご婦人までおやつに頂くお菓子として流行した時代がありました。歴史的にも人々の生活の中に深く馴染んでいる植物です。
エイザンスミレの特徴
スミレは世界中に広く分布しており、西アジアからヨーロッパ、北アフリカまでを生息地としています。そしてもちろん日本にも数多くの品種が自生しており、エイザンスミレは本州から九州にかけて多く見られる日本固有の日本原産品種です。
背丈は10センチメートルから15センチメートルで茎は横ばいになる性質があり、葉は根生でハート型をしていますがエイザンスミレは他のスミレとは違い葉に深い切れ込みがあるのが特徴です。このエイザンスミレと自然交雑した品種も同様に葉に切れ込みが現れるのですぐにエイザンスミレとの交雑種だということがわかります。
花期は4月から5月で左右対称の5つの花びらがあります。すみれ色と呼ばれる濃い紫が美しく、さらに白や薄紫、ピンク等の品種もあります。一重咲きのものが多いのですが希に八重咲きするものもあります。同じ種類のパンジーやビオラに比べると花が小さいのですが、
大変香りがよく、1株部屋に置いておくだけでも部屋中に芳香が広がっていきます。このように良い香りと可憐な花姿からは想像できないのですが、種や根には神経毒があり、口に入れると神経麻痺や嘔吐を引き起こしてしまう可能性があるので注意が必要です。
一方でこの毒性を薬効として古くから使ってきた歴史もあり、ヨーロッパでは咳止めや消炎剤、目薬として利用されてきました。鎮静効果も知られており、怒りを鎮めたり、就寝時に神経を鎮めるものとして利用されてきました。エイザンスミレは寒さには強いのですが暑さに弱いので管理の上では夏越しがポイントとなります。
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