オオバハブソウの育て方

オオバハブソウの育て方

オオバハブソウはオオバノハブソウとも言われ、古くから薬用として珍重されてきた薬草です。江戸時代に渡来した当時は、ムカデ・ヤマビルなどの有毒な虫に刺されたときやハブ(毒蛇)に噛まれたときの民間薬として使用されていました。

育てる環境について

熱帯地方原産の植物なので、寒さには非常に弱いところがあります。幼苗期から温度管理には十分注意を払い、気温が上がりきらないうちに種をまくのは控えましょう。耐寒性はあまりありませんが、日本に帰化植物として定着していることからも分かるように、温暖な地域ならばこぼれ種で増え、荒れた草地でもしっかりと根付く丈夫な植物ですから、育て方はそれほど難しくありません。

現に熱帯のみならず世界中の亜熱帯に生息し、分布を拡大する強靭な繁殖力と生命力を持っています。地植え・鉢植え・プランターと用途も幅広く場所を選びませんので、ガーデニング初心者のベランダ園芸から上級者の畑栽培までレベルを問わず育て甲斐があります。日光を非常に好み、水はけ・水もち、通気性の良い土壌でよく育ちますが、多少やせた土地でも無理なく栽培できます。

生育環境によっては高さ1.5メートルほどにもなるため、途中で斜めに傾くようなら園芸用の支柱を立てて誘引してください。スペースを確保できそうにないときは、コンテナ植えにしてやや小ぶりに育てるといいでしょう。ベランダにネットを設置し、伸びた茎の所々をヒモで固定すれば緑のカーテンに最適です。

暑くなるほど生育旺盛になりますから、1年でいちばん日差しの強い季節にこんもりと茂って自然の日よけになってくれます。葉をハブ茶に利用する場合は8月の最盛期が摘みごろです。オオバハブソウは刈ったところから新しい茎がどんどん伸びてくるので、風通しをよくするためにも積極的な収穫をおすすめします。

種付けや水やり、肥料について

4月上旬~5月下旬頃、元肥を適量混ぜ込んだ土に直まきまたはポットなどに苗床まきを行います。マメ科の植物の根には根粒菌という細菌が寄生していて、大気中の窒素を吸収することで窒素化合物に変化させ、宿主に供給する働きをもっています。そのためオオバハブソウは自前で窒素を作り出せることになり、窒素系肥料をほとんど必要としません。

元肥をやりすぎると栄養過多で軟弱な株に育ち、病害虫を寄せつける原因にもなりますので注意しましょう。オオバハブソウの種子はやや硬さがあるので、1~3日ほど浸種させると発芽しやすくなります。発芽に高めの温度を必要としますから、早すぎる播種は失敗のもとです。暖地では4~5月、寒地では5~6月を待って種まきします。

トレイなどの小型の容器にキッチンペーパーを敷き、ひたひたに水を注いで湿らせた状態にしてから種を並べます。春は日に日に気温が上昇する季節です。種を腐らせないよう、浸種中は毎日水を代え常に清潔に保つようにしてください。直まきの場合は株間が混み合ってきた時点でそのつど間引き、最終的に株同士の間隔が30~40センチになるように調整します。

ポット苗は本葉が2,3枚出た段階で定植してください。順調にいけば最短で7月上旬には愛らしい黄色い花が咲きはじめます。水やりは土の表面が乾いたらたっぷりと、とくにコンテナ植えでは水抜き穴から水が流れ出るくらいふんだんに与え、それ以外は若干乾かし気味に育てます。

増やし方や害虫について

9月~10月を迎えると、咲き終わった花から順に、マメ科らしい長い弓状の莢がムクムクと膨らみはじめます。力強く莢先をもたげる様子は、前出のエビスグサには見られないオオバハブソウならではの特徴です。緑色の莢が熟して半褐色になってきた頃、中身がパンパンに詰まって今にも弾けそうなものから優先的に収穫していきます。

集めた種は水気を飛ばすために最低1日は天日干ししておきましょう。オオバハブソウの種子は、望江南子(ぼうこうなんじ)という生薬名が付けられており、望江南(ぼうこうなん)とは区別されています。ハブソウは英名を「coffeesenna」といい、アフリカでは望江南子を炒って代用コーヒーにすることは知られるところです。

どちらかというと害虫のつきにくい植物ですが、アブラムシの被害に遭うケースがあります。幼苗は防虫ネットで飛来を防ぐなどして対策をとり、ネットに収まりきらないほど成長したものについては食酢か牛乳を水で薄めてスプレーしてみましょう。それでも効果がないときは、専用の薬剤を使用してください。

また、オオバハブソウはそれ自体を田畑の緑肥に活用できます。緑色に茂ったオオバハブソウを土にすきこみ耕すことで新鮮な有機物となり、それをエサにした有用微生物が活発に働き土壌に活力を与えてくれます。排水性と保水力を高め連作障害を防止するだけでなく、根野菜や草花の生育に被害をもたらすネグサレセンチュウやハリガネムシといった害虫の発生を予防します。

オオバハブソウの歴史

オオバハブソウはオオバノハブソウとも言われ、古くから薬用として珍重されてきた薬草です。江戸時代に渡来した当時は、ムカデ・ヤマビルなどの有毒な虫に刺されたときやハブ(毒蛇)に噛まれたときの民間薬として使用されていました。とくにハブの被害が深刻な沖縄では、葉をもんで汁を出し擦り込むように塗り付けて応急処置に使われたといいます。

オオバハブソウという和名もハブに由来しますが、実際に解毒に効果があるかどうかは定かではなく、日本人の誤解が生んだ迷信ではないかとする説が有力です。ハブソウの茎と葉は、望江南(ぼうこうなん)という名前で漢方薬にも用いられていて、蛇の猛毒を消すほどではなくても軽い虫刺され程度には有効です。

美容と身体に良いとされる健康食品「ハブ茶」は、同じカワラケツメイ(センナ)属マメ科の植物であるエビスグサの種子を原料にしています。エビスグサは決明子(けつめいし)と呼ばれる生薬として有名なことから、一般的にハブ茶といえばこちらを指しますが、ハブソウの種子と葉を炒って煮出したものも同様の名称で存在し、

健胃整腸・神経痛・便秘に効果があることで知られています。両者は非常に近い仲間で、花や鞘の姿かたちが瓜二つのためしばしば混合されやすく、ちょっと見かけただけでは判断できないほどよく似ています。オオバハブソウは現在、薬用植物として植物園や研究機関で栽培されているほか、一部地域では野生化して帰化植物に分類されています。

オオバハブソウの特徴

オオバハブソウは、北アメリカ南部から中米にかけての熱帯アメリカおよび中国南部が原産地です。上記のとおり日本では帰化植物として野生化しており、沖縄・小笠原諸島といった年間通して温暖な亜熱帯を生息地としています。日本では通常1年草ですが、気温が十分に上昇する地域では涼しくなっても完全に枯れることなく生き続け、毎年花を咲かせる多年草として楽しむことができます。

高さ70~120センチほどの落葉低木で、7月~10月にかけて茎の頂部に目に鮮やかな黄色い花を数個つけます。和名からは想像のつかないほど可愛らしい咲き姿を見せるため、園芸愛好家にも人気の品種です。オオバハブソウの花弁はマメ科の植物によくみられる蝶型ではなく、楕円の5つの花弁からなります。

上下で大きさに違いがあり、上側の3枚に比べて下側の2枚は小さめです。10本もある雄しべの長短は不揃いで、上部に短い3本が横一列に並び、中央にはクシャッと縮こまるように5本が密集し、下部に一際長い2本が突き出たユーモラスな恰好をしています。オオバハブソウの花は非常に美しく、切り花としてもとても魅力的です。

先に挙げたエビスグサとの見分け方法ですが、葉の形状や莢のつき方で区別することができます。エビスグサの葉は全体的に丸みを帯びて柔らかな印象を与えるのに比べて、オオバハブソウの葉先は鋭角でシャープです。また、エビスグサの莢は垂れ下がるようにつくのに対して、オオバハブソウはそそり立つように持ち上がります。

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