ユキモチソウの育て方

育てる環境について
ユキモチソウはもともと日光が当たりにくい山野の樹林下を生息地としています。そのため、育てる場所も自生地と似たような環境がベストであり、日光の当たらない場所が良いとされています。だからといって、まったく陽が当たらないと光合成できずに枯れてしまいますし、真夏の直射日光に当たってしまうと葉焼けを起こしてしまいます。
明るい日陰が最適と言われていますが、栽培するのにこれが一番難しいかもしれません。具体的に言えば、人間が森林浴をするのに適しているような場所です。また仏炎苞が受け皿となって雨を受け取ってしまうため、雨が降ると花が痛んでしまうことが多いです。日差しにも雨にも当たらないように気をつけないといけないため、
山道の脇などに植えていることが多いです。樹木の葉が陰を作り、雨も直接当たらないようにしてくれるからです。他にも路地裏などでも育てやすい環境になるかもしれません。また、もしも一般的な庭に育てようと考えるのならば、専用に屋根やネットを設けるといいです。でも、一番良いのは鉢植えやプランターで育てることです。
草丈は高くても30cmほどなので鉢植えでも十分に育てられます。気候や季節に合わせて鉢ごと移動させることができるため、最適な環境で育てることができます。そして、日光と雨には気を使わないといけない一方で、気温については暑さも寒さもほとんど気にする必要はありません。その点においては管理しやすいです。
種付けや水やり、肥料について
水やりに関しては、とにかく湿気を好む植物であるため頻繁に水をやるのが良いとされています。基本的に水をやり過ぎてもほとんど問題はありません。生長期(4月から11月頃まで)では、晴れている日には1日1回たっぷりと水を与える必要があります。ただし、先に述べたように雨に当たると痛んでしまいます。
それは水やりでも同じことなので、開花しているときは花に当てないように水をやるように心がけなくてはなりません。その一方で休眠期(11月から3月頃まで)に入ると水やりの量を減らしても問題はありません。しかし、土壌を乾燥させてしまうと球根が痛んでしまうことがあるので、なるべく常に土に湿り気があるようにするべきです。
また寒さには強いですが、球根を凍らすのも痛める原因であるため、0℃以下のときも水やりは控えたほうがいいです。肥料はまず植えつけたとき、土壌に緩効性肥料を混ぜて耕しておきます。また、有機質に富んだ水はけのよい土壌が良いとされています。一般的な腐葉土でも良いですが、
そこに赤丸土や軽石などを混ぜてより一層水はけを良くすれば育ちやすくなります。植える前には、そのような土壌の改良をしておくと良いです。植えた後は、花が落ちる5月から6月頃と地上部分が枯れる10月頃の計2回、有機質肥料を置き肥します。それに加えて生長期に2週間に1度のペースで普通よりも薄めた液体肥料を与えると、より早く生長するようになります。
増やし方や害虫について
ユキモチソウは害虫対策が大変な植物でもあります。というのも、日陰で湿度の高い場所に植えるからです。そのため、どうしてもナメクジやネグサレセンチュウやネカイガラムシやハダニといった害虫が発生しやすく、葉を食べられてしまうことがあります。そして、球根はネジラミによる食害が知られています。
これらを放置しておくと枯れる原因となるため、対策としては市販されている殺虫剤などを活用するのが一般的です。そして、希少種でもあるユキモチソウを増やしたいと考えるのならば種子を作ることになります。球根があるものの分球しないからです。ただし、種子を作るにも、すでに述べたように雌雄異株です。
雄株と雌株の2つが揃わないと実を結ぶことはありません。また雌雄は環境によって変化するため、近くに2株植えておけばいいというものでもありません。しかも、種子から育てたとしても開花するまでには4年はかかると言われています。希少種らしく増殖させるにはいろいろと手間がかかりますが、不可能ではありません。
ユキモチソウの果実は液果と呼ばれる水分が多いのが特徴です。そのため、運よく実が熟すことができたら、水で洗って種子を取り出します。その種子を2月下旬か11月下旬に植えることになります。土壌はすでに述べたように水はけの良い有機質が豊富なところに撒くと良いです。ただ育つまでには時間がかかるため、地植えするのではなく鉢植えにしたほうが対応しやすくなるのでオススメです。
ユキモチソウの歴史
ユキモチソウ(雪餅草)は非常にユニークな花を咲かせます。名前からも分かるように、真っ白な平皿に真っ白な餅が載せられているような花です。非常に珍しい姿であるため、日本ではあまり馴染みのない植物だと感じるかもしれません。原産地が外国だと感じるかもしれませんが、実は日本と言われています。
ただし自生している場所は四国と近畿地方の一部と非常に限られているため、日本でもあまり知られていませんでした。地域が限定的であり自生している個体も少ないため、現在では環境省によって絶滅危惧種Ⅱ種に分類されています。つまり、希少種です。そう聞くと栽培が無理なのかと勘違いする人がいますが、
実はユニークな花であるため昔から栽培されてきました。現在でも植物園などでは定番の花として育てているため、そこで見かけた人も大勢います。希少種ではありますが、個人で栽培しても法的に問題はありません。ただし、育て方にいくつかの条件が必要となってきます。例えば日陰と湿気を好む傾向にあります。
ガーデニングや園芸を嗜む人の多くは日当たりの良い庭や畑で育てています。もしも、ユキモチソウを育てることになると特別に環境を整えてあげる必要があるため、栽培している人は非常に少ないです。逆に湿度と日陰のある場所を持て余している人ならば、ぴったりの花と言えます。園芸品種のなかでは育て方が比較的難しい植物ではありますが、だからこそガーデニングで楽しむことも可能です。
ユキモチソウの特徴
すでに述べましたが、ユキモチソウの花は非常にユニークな形状をしています。真っ白な平皿に白い餅を載せたような形であり、一見するとキノコのようにも見えます。ただし、厳密にいえば平皿の部分は花ではなく葉です。その平皿の一部が高く伸びています。それは仏炎苞と呼ばれています。
仏炎とは仏像の背後に炎の飾りのことで、苞とは花の付け根に出る葉のことです。仏炎苞の下部分は白色なのに対して、上に伸びている部分は紫褐色に変色しています。なぜ仏炎苞があるのかは明確にはわかっていませんが、一説には昆虫をおびき寄せて受粉をさせるためだと言われています。
たったの一つしか咲かずその大きさも10cmにも満たない小さいものですが、その白と紫褐色のコントラストのおかげで非常に目立つ花です。決して派手な花ではありませんが、謙虚に咲く姿が人気です。また特徴的なものに雌雄異株です。雌雄異株事態はイチョウやアオキなどがそうであるため、決して珍しいわけではありません。しかし、栄養状態が変化すると雌雄が逆転してしまう性質も持っています。
一見するとどちらが雄株か雌株か区別ができませんが、雄株には仏炎苞の下部に穴が空いています。これは雄株の花で花粉をつけた昆虫が出やすくして、雌株に花粉を運んでもらうためだと言われています。この性転換する雌雄異株は植物のなかでも非常に珍しく、花の形状以上にユニークとなっています。そんな珍しいユキモチソウが日本に自生しているわけです。
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