ヒトツバタゴの育て方

ヒトツバタゴの育て方

20万年前の近畿地方の地層から、泥炭化されたヒトツバタゴがみつかっています。しかし、現在の日本でヒトツバタゴが自生するのは長野県の一部と岐阜県、愛知県、すこし飛んで対馬のみです。

育てる環境について

日当たりのよい、やや湿り気のある場所を好みます。一日に四時間以上の直射日光があたり、湿潤すぎない場所が適しています。温暖な地域が主な生息地であり、寒さにも強いので、ほとんどの地域で栽培が可能です。乾燥地ではうまく育ちません。たっぷり水を吸う環境にしておきましょう。

土質はとくに選びません。湿っていればやせ地でも生育しますが、有機質の多い土だとよく育ちます。大きくなる木なので、電信柱、電線にかかるような場所は避けましょう。枝はよく広がり、落花・落葉がありますので、道路や近所に迷惑にならないよう、植える場所をよく吟味しましょう。

また、枝の延びる先だけでなく、根が育ったときに周囲の地面に与える影響も想定しておきましょう。育て方自体はむずかしくありませんが、大きくて目立つ木なので、まわりへの配慮が必要です。園芸用としてしばしば使われるアメリカヒトツバタゴは、アメリカ北東部が原産です。

同じく湿った土壌を好み、寒さと暑さに強いので、ほぼ同じ環境で育てることができます。こちらは日本のものより樹高が低く、育つのがゆっくりです。日本で自生するヒトツバタゴは、丘陵地~低山地で生育します。中部地方におけるヒトツバタゴの自生地は、

大きな岩があったり、河川の際で根が岩を抱え込んでいることが多いようです。そうした環境を頭に入れると、栽培しやすいかもしれません。種を完全に乾燥させてしまうと、蒔いても発芽しなくなります。種を貯蔵する場合は、熟す前に採り、果肉を洗い落として、湿った川砂に混ぜて保存しましょう。

種付けや水やり、肥料について

種は10月、もしくは三月上旬までに蒔きます。1、秋に熟した黒い果実から種を取り出し、そのまま秋に蒔く2、保存加工したものを、春に蒔くそのままでは発芽性が悪く、発芽までに二年かかることもあります。春に発芽しても、花が咲くまでには基本的に数年以上かかります。

例外として、種の殻を割り、発芽促進剤に漬けておくと、発芽率が上がります。接木すると蕾がつくのが早くなります。植え付け、植え替えの時期は、11~3月上旬までです。葉が落ちたら植え替えてかまいませんが、芽が出ると根が動くので、芽が出る直前までにします。

邪魔な枝を払い、剪定を済ませておきます。植え替え場所はしっかり耕し、水もちがよいよう、腐葉土を多めに混ぜておきます。水はけがよくない場所では、盛り土をして高植えをする、畝を立てる、溝を掘るなど排水をよくします。根付くまで、土が乾燥しないように根元に敷きワラや落ち葉などで覆っておきましょう。

鉢植えでは根が張りづらく、バランスをくずして倒れやすくなるので、支柱を立てるのもよいでしょう。植えつけてから二年未満は、土が乾いたら朝に水をやるようにします。夕方以降は深く根を張らせるため、水やりはしないようにしょう。庭に植えた場合、二年目以降はほとんど水やりは必要ありません。

鉢植えでは、乾いたら土へ水をやることを継続します。乾燥する場所では根元を覆っておくなど対策を採りましょう。庭植えは、冬に寒肥を与えます。油粕と鶏糞、化成肥料を土に埋めます。鉢植えは、三月に化成肥料を根元へ追肥します。肥料はあまりたくさんやらなくても大丈夫です。

増やし方や害虫について

種を蒔くか、挿し穂で増やします。ヒトツバタゴの種は殻が固く、土の中で二年後に根を伸ばすことが多いです。挿し穂では、新芽の枝を使います。まず切り口を斜めに切り、下側の葉を落とし、2時間ほど水揚げします。土に挿し、土を乾燥させないように水をやります。

2~3ヶ月で根がつきます。はじめての開花は控えめなものになりがちですが、年々花数が増えゆっくりと生長します。実がなるのは両性花株ですが、雄株はより花が多く華やかになります。実を採るか、花を楽しむかで株の選び方も変化します。

害虫はほとんどつきません。まれにアブラムシがついたり、うどんこ病や胴枯れ病にかかることがあります。アブラムシには殺虫剤が効きます。うどんこ病は葉に白い粉をまいたように菌糸で覆われる病気で、胞子によって感染します。被害の大きい葉や胞子がついている葉は焼却して処分し、殺菌剤を散布しましょう。

胴枯れ病は樹皮のはがれ傷ついた部分に菌が入り込み、患部より上を枯らしてしまいます。発見したらすぐに殺菌消毒しておきましょう。植え付け後二年ほどは剪定は必要ありませんが、大きくなってきたら剪定を行ってください。ヒトツバタゴは手をいれなくともある程度まとまり、自然な樹形が楽しめる樹木ですので、

大きな枝を払うなどはせず、整える程度でかまいません。奥の枝にも日光をあて、風通しがよいよう、込み入った部分の枝は落とします。花の後、夏場に行う剪定では、開花していた枝の先端や、葉芽のない短い枝を分岐点の上で切ります。落葉後に行う剪定では、夏に延びすぎた枝、下向きの枝など不要なものを分岐点の上から払います。

ヒトツバタゴの歴史

20万年前の近畿地方の地層から、泥炭化されたヒトツバタゴがみつかっています。しかし、現在の日本でヒトツバタゴが自生するのは長野県の一部と岐阜県、愛知県、すこし飛んで対馬のみです。また、日本以外でも、朝鮮半島、中国の一部と北アメリカの一部に不連続に分布しているのみで、生息地にかたよりがあります。

かつては近畿地方と現在の生息地を含めた広い範囲でヒトツバタゴは繁茂していたと考えられています。現在なぜ狭い範囲のみに生息地が限られてしまっているのかはまだわかっていませんが、ヒトツバタゴの生態や存在は、20万年前からの地球の歴史の鍵となるのかもしれません。

ヒトツバタゴが日本の図鑑に初めて記載されたのは、「物品識名拾遺」という百科事典です。江戸時代後期1825年に、尾張の植物学者である水谷豊文が著したもので、名前と簡単な説明が書いてある本です。このときにヒトツバタゴという名がつけられたのではないか、と考えられています。

昔、長野県のある地方では「こくさ花」と呼ばれていました。若草(小草)刈りをするころにヒトツバタゴの花が咲くので、農作業のめやすとされていました。また、明治神宮外苑にもヒトツバタゴが植生しており、名前のわからない珍木ということでナンジャモンジャノキと呼ばれました。

戦中から戦後の窮乏の時代にはヒトツバタゴを味噌作りの薪としたという話も伝わっています。このように、ヒトツバタゴは局地的な生息地でありながらも地域に密着し、愛着をもたれていました。

ヒトツバタゴの特徴

ヒトツバタゴは本州中部と対馬に分布するモクセイ科の落葉高木です。成木では25メートルを超える大型の木で、直径は70センチメートルにもなります。5~6月ごろに、木の葉に雪がかぶったように白い花が咲きます。花は四つに裂けた細い花びらで、新枝の先にまとまって咲きます。

すこし甘い香りです。花の柄に折れ曲がったような関節がいくつか見られます。雄花を付ける株と、おしべとめしべをもつ両性花をつける株があります。雌花のみをつける株は存在しないので、雌雄異株のなかでも雄株・両性花異株という分類になっています。

両性花の株では、秋に黒く熟す楕円形の果実がなります。直径一センチ程度で、種はふつう一個です。この実は食用にはされていません。樹皮は灰色で、コルク層が発達し、縦に裂け目ができます。葉は卵形で4~10センチメートル、長い葉柄で二枚向かい合って枝につきます。

若葉のときのみ鋸のようなぎざぎざがあります。全体が緑色で、やや厚く、葉脈上に細い毛が生えています。紅葉の時期には黄色に染まります。ヒトツバタゴは「ひとつ葉のトネリコ(タゴ)」という意味で、トネリコは複数の小葉が集まって一つの葉となっています。

対して、よく似ているのにヒトツバタゴは一枚だけでひとつの葉なので、この名前がつけられました。また、ヒトツバタゴの一種に、アメリカ東南部原産のアメリカヒトツバタゴがあります。こちらはアジアのものよりも比較的小さく、樹高は10メートル程度です。葉はひとまわり大きく、花は古枝につく、といった違いがあります。

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