ミヤマゼンコの育て方

ミヤマゼンコの育て方

ミヤマゼンコは日本の本州中部を原産地とし、亜高山~高山にかけて生息するセリ科の高山植物です。「ゼンコ」とはノダケ(ノゼリ)の別名で、本植物種はこの種の高山種になります。野山に自生して摘み草となるものをノゼリと呼ぶ歴史は古く、平安時代にまとめられた日本最古の薬物辞典にも「乃世里」として記述されています。

育てる環境について

ミヤマゼンコがセリ科の中でも特に標高の高い草地・砂礫地を生息地とするのは上記のとおりです。そのため、田畑のあぜ道に生える一般的なノダケと違って分布域が限られていますが、中部山岳地帯ではとりたてて珍しい植物というわけではありません。北海道~東北地方の寒冷地に生息するため、関東より南の温暖な気候では栽培が難しく、

低温設備を用意するなどして環境を整えない限り育てるのは至難の業です。しかし、生息地が異なるだけで本来はノダケと同じくらい生命力のたくましい植物ですから、生育条件さえ合えば栽培も不可能ではありません。セリ科の仲間は程度の差こそあれ湿り気のある場所を好みます。直射日光を嫌うので、

1年を通して日中半日陰もしくは日差しのやわらかな涼しいところが適した環境といえるでしょう。ミヤマゼンコは大型で草丈が高く、花軸も太くて丈夫な品種ですが、日常的に強い風の吹き付ける場所では耐えきれず折れたり曲がったりすることがあります。生息地で見つけるとしばしば岩に支えられるように生えており、

他の植物の茂った密度の高いポイントに集中する姿が目に付くことからも、より安定した状態で確実に子孫を残す方法をとっていることがうかがえます。高山地帯は1日の気温の変化が大きく、栄養に乏しい上に保水性の低い土壌です。植物にとって厳しい条件が揃うなか、あえて適応する理由は競争相手が少ないからに他なりません。こうした特殊な地域に生きる植物が平地に順応することは容易ではないようです。

種付けや水やり、肥料について

したがって、高山植物の多くは生育に一定の条件を要するため、希少価値の高い品種や絶滅危惧種を含みます。一部の植物については環境保護の観点から、研究機関以外の一般または一切の動植物の採取を禁止する地区もあります。ミヤマゼンコも固有種という意味では貴重な存在ですので、無分別に採取するのは控えましょう。

平地で育つものについては、春~秋にかけて品種改良された園芸種がポット苗として出回ります。セリ科の草花は、ノゼリ・ミズゼリ・タゼリ・カワゼリという具合に、各々の生えている場所を表した呼び名が定着しています。ノダケ(ノゼリ)については上記でも挙げたように摘み草となるものを指し、

ミズゼリは水中に生えるもの、タゼリは水田で育つものをいいます。夏野菜として市場に出回るのは圧倒的にタゼリが多く、ミヤマゼンコと異なり温暖な気候でほぼ1年中収穫できることから、暑い盛りに収穫される代表的な水生蔬菜となっています。品質の面では野菜農家に遠く及びませんが、

これらはもともと野山に自然に生育するくらいですので、水生野菜の育て方の基礎知識があり、水質さえ綺麗に保っておけばそれなりのものはできます。ミヤマゼンコの場合は肥料をほとんど必要とせず、タゼリなどと違って水生でないため、

高山帯特有の湿気や降雨によってもたらされる適度な水分さえあれば十分成長できます。夏場、花の最盛期には蜜を目当てにアリやハチ、カミキリ類などの昆虫が頻繁に訪れ、忙しく動き回って受粉を助けてくれるでしょう。

増やし方や害虫について

8月下旬頃、花の咲き終わった後にカレー粉のような匂いを漂わせた種ができはじめます。同科の茴香(ういきょう)が、ハーブやスパイスとしてフェンネルの英名で馴染み深いことを考えれば意外な香りにも納得がいきます。自然界では時期が来ればこぼれ種で芽吹くため、種まきをするなら春にばらまきするといいでしょう。

人里でも見かけるキアゲハの幼虫はセリ科の植物を主食としますので、ときどき葉裏をチェックして発見次第取り除きます。平地で育つ品種が豊富なため、あえてミヤマゼンコを民間薬や食用にする風習は知られていませんが、ノダケの一種ですから食べられないこともありません。ただし、ノダケを摘むときはドクゼリにはくれぐれも注意してください。

ドクゼリはドクウツギ・トリカブトと並ぶ日本三大有毒植物に数えられており、誤食すると嘔吐・下痢・けいれん・呼吸困難といった激しい中毒症状を引き起こしとても危険です。鎮痛作用を期待して痛み止め・痒み止めに使用して命を落とした例もありますので、十分な知識のないまま野草をむやみに傷口にあてることは避けましょう。

ドクゼリは有毒植物として高い知名度があるにもかかわらず、毎年のように全国で被害が報告されています。四国・九州・本州・北海道・近畿地方などの広い範囲に生育しているものの、ミヤマゼンコのように高地に生えるわけではないので本種と混同することは少ないでしょう。ワサビのような地下茎があり、セリ科独特の香りのない点で判断がつきます。

ミヤマゼンコの歴史

ミヤマゼンコは日本の本州中部を原産地とし、亜高山~高山にかけて生息するセリ科の高山植物です。「ゼンコ」とはノダケ(ノゼリ)の別名で、本植物種はこの種の高山種になります。野山に自生して摘み草となるものをノゼリと呼ぶ歴史は古く、平安時代にまとめられた日本最古の薬物辞典にも「乃世里」として記述されています。

ノダケの名が登場したのは江戸時代になってからのことで、まっすぐに伸びた茎と肥大した葉鞘を竹(タケノコ)に見立てたのを語源とするようです。ミヤマゼンコを漢字表記すると「深山前胡」と書く様子からも高地の山岳地帯に自生する品種らしい趣が見て取れます。ゼンコの仲間は中国では「前胡」の漢名で漢方薬に用いられており、

根を採取して乾燥させたものを生薬に加工します。これらは解熱・鎮痛・抗炎症・鎮咳去痰といった風邪の諸症状や、喘息などの気管支の不調、胃腸の不快症状に効果効用を発揮するため、古くより治療を目的に服用されてきました。漢方の理論では、寒性の植物は身体の熱を下げる性質を持つといわれ、

とくに総合感冒薬に配合されることが多いようです。このように、セリ科の植物は薬効の高いことで知られていて、前胡の他にも当帰(とうき)・川きゅう(せんきゅう)・茴香(ういきょう)といった生薬が有名です。

日本固有種であるミヤマゼンコについては薬草として利用することはほとんどありませんが、茎先に綿毛のような極小の花が密集する咲き姿は素朴ながらも清らかで美しく、主にトレッキングをしながら楽しむ野生植物観賞で親しまれています。

ミヤマゼンコの特徴

7月~8月に花期を迎える多年草で、自生のものは30~60センチ程度にまで成長します。国内に生息する近親種は全国各地に約20種類も存在し、これらは草姿が大変よく似ていることから非常に見分けがつきにくくなっています。とりわけ同じセリ科のハクサンボウフウ・シラネニンジン・ミヤマトウキは、草丈にはじまり、

切れ込みの鋭い羽状複葉や繊細な5弁の花の形など多くの共通点を持つため区別はさらに困難です。ミヤマゼンコ独自の特徴を細かく挙げるならば、前出の植物と比べて葉の中心の軸がはっきりしていること、両側についた小葉が細かいこと、雄しべが紫色であること、小総苞片(球状の花部分のすぐ下にある葉が変形したもの)が小さくて目立たないことなどが挙げられます。

ほとんど同一に見えるタカネイブキボウフウにいたっては、蕾の色で見分けるのが最も確実性の高い方法です。ミヤマゼンコの蕾が純白なのに対して、タカネイブキボウフウの蕾は可愛らしいピンク色をしています。また、ミヤマゼンコの茎の分かれ目にある葉柄の基部は赤褐色であり、

セリ科のたくさんの品種にみられるように薄い鞘状に伸び広がって葉の付け根にある脇芽を抱き込むような形になっています。花がとても小さいため、密集した花序は遠目には白い大きなかたまりにも見えますが、間近で観察すると一つ一つの小花の中央から雌しべの花柱が長く伸びて突き出し、それぞれ独立していることが分かります。

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