ナシの育て方

ナシの育て方

ナシの歴史は、中国の西部から南西部を中心として、世界中に広がりました。原産地となる中国から、東に伝わって品種改良が進んだものは東洋梨、西に伝わって品種改良が進んだものは西洋梨として定着しています。

ナシの栽培(植えつけ~剪定)

ナシの栽培は、果実の収穫までに3~5年かかるといわれています。育て方の難しい果樹ですが、比較的寒さには強く、11月から翌年3月までの間で、極寒期を避けて苗木を植えつけます。

②栽培における1つ目の注意点は、育て方以前の問題で、苗木の選び方にあります。うっかり果実が実らない組み合わせの苗木を選んでしまうと、せっかく栽培しても収穫することができません。果実が実りやすい組み合わせの中から、2品種の苗木を選ぶようにしてください。

③2つ目の注意点は、育てる場所の問題です。ビャクシン類の植物(カイヅカイブキ、タマイブキなど)の近くに植えつけてしまうと、赤星病という病気に感染しやすくなります。周囲にビャクシン類の植物がないかを確認して、日当たりと水はけの良い場所を選んでください。

④植えつけ1ヶ月前に、土作りを終えておきましょう。伸びた枝を誘引するための支柱や棚を組んで、直径50cm、深さ50cmの穴を2箇所掘ります。掘り出した土5、完熟腐葉土3、赤玉土小粒2の割合で混ぜてください。このうち、3分の1程度の土に、1株あたり300gの粒状肥料を加えて穴に戻します。肥料を混ぜていない土は、盛り土にしておきましょう。

⑤土作りから1ヶ月後に、盛り土を使って苗木を植えつけます。接ぎ木部分から50~70cmの高さで切り詰めて、支柱に固定してから水をたっぷり与えてください。その後の水やりは、土が乾いたら与える程度で十分です。特に、結実期の水やりを控えめにすると、糖度の高い果実を実らせます。

⑥一般的に、春・秋・冬の年3回、肥料を与えます。品種によって有効性の高い肥料がありますので、良く吟味して選びましょう。

⑦剪定は、枝に葉がついていない12月から翌年2月の間に行います。軸となる太い枝が3~4本、そこから伸びる2番目に太い枝が3本になるように、バランス良く切り詰めてください。2番目に太い枝から伸びる、最も短い枝には、ナシの果実が実ります。元気に成長している上向きの短い枝が残るように、15cm間隔を目安に剪定してください。枝の伸び具合に合わせて、支柱や棚に誘引しておきます。

ナシの栽培(摘蕾~収穫)

①春になってつぼみが膨らんだら、摘蕾を行います。軸となる太い枝の、先端50cmについたつぼみは、全て摘み取ってください。その他の枝は、花が咲く前に、1房あたり2~3個のつぼみを残して摘み取ります。

②花が咲いたら、種付けを行います。ひとつの花で5~6花に種付けできますので、2品種の花をそれぞれ摘み取って、別の品種の花にこすりつけるように種付けしてください。種付けを終えたら、ひとつの房に2花が残るように、摘花をしておきましょう。

③花が散って、果実がビー玉くらいの大きさになったら、1回目の摘果を行います。1房に1個の果実が残るように、成長の悪い果実を摘み取ってください。2~3週間経過したら、2回目の摘果を行います。20~30cmの範囲に1個の果実が残るように、成長の悪い果実を摘み取ってください。

④育て方のポイントとして、摘果が終わったら、虫がつかないように袋掛けを行います。果実袋で果実を覆い、風に飛ばされないよう枝に固定してください。水やりは控えめにして、甘い果実を実らせましょう。水を与えすぎたり、育て方が悪かったりすると、良い果実が実りませんので注意が必要です。

⑤果実が色付いて大きく育ったら、いよいよ収穫です。果実が熟していれば、下から持ち上げるようにすると枝から離れます。ひとつひとつ熟し具合を確認しながら、それぞれの品種の果実を収穫しましょう。

ナシの病害虫対策

①白紋羽病・・・幹や枝に菌が感染し、果樹の発育が悪くなる病気です。繁殖しやすいので、植えつける前に苗木の根を消毒しておきましょう。

②赤星病・・・ビャクシン類の植物が、病原菌の媒介となる感染症です。葉や果実に感染するので、ビャクシン類の植物付近には植えつけないよう注意してください。感染した葉を見つけたら、すぐに摘み取って処分しましょう。

③黒星病・・・葉や花に、黒いススのような病斑ができます。果実にも転移してヒビ割れてしまいますので、見つけたらすぐに摘み取って、専用の薬剤を散布してください。

④黒斑病・・・気温が15度を超えると、発生しやすくなる感染症です。枝、つぼみ、葉、果実などに感染し、褐色や黒色の斑をつくります。袋掛けをした果実にも感染しますので、定期的な薬剤散布を行いましょう。

⑤胴枯病・・・病原菌が幹や枝につき、放置すると枯れてしまう病気です。感染した部分は、すぐに切り詰めてください。発症すると治療できない厄介な病気ですが、剪定後の枝に傷口保護剤を塗ったり、薬剤の予防散布を行ったりすると、防ぐことができます。

⑥害虫・・・カイガラムシ、アブラムシ、シンクイムシ、カメムシ、ハダニなどの害虫に注意しましょう。春になったら、果実専用の薬剤を予防散布してください。

ナシの歴史

ナシの歴史は、中国の西部から南西部を中心として、世界中に広がりました。原産地となる中国から、東に伝わって品種改良が進んだものは東洋梨、西に伝わって品種改良が進んだものは西洋梨として定着しています。

東洋梨は、和梨と中国梨に大別されます。和梨は、赤梨(果皮が黄褐色の品種:幸水、豊水など)と、青梨(果皮が黄緑色の品種:二十世紀、八雲など)に分けられます。中国梨は、主に果皮が黄色の品種です。

東洋梨の果実は球形ですが、西洋梨の果実はひょうたんに近い形をしています。主な品種には、ラフランス、ルレクチェ、バートレット、オーロラなどが挙げられます。

日本での歴史は、中国や朝鮮半島方面から伝わった説や、ニホンヤマナシから改良された説など諸説ありますが、弥生時代の登呂遺跡からナシの種子が多数発見されており、この頃から食されていたと考えられています。文献として最古の記録は、日本書紀の中に残されています。

江戸時代に入り、栽培技術が発達するとともに、果樹園では100以上の品種が栽培されるようになりました。明治時代には、現在も栽培されている二十世紀や長十郎という品種が発見されています。その後も多くの優良品種が発見されて、品種改良が盛んになるとともに、和梨の生息地は日本全土に広がりました。

ナシの特徴

ナシの属性は、バラ科ナシ属、落葉高木に分類されています。果樹の高さは2.5~3メートルに育ち、直径10~18センチ程度の丸い果実を実らせます。果汁を多く含む、糖度11~14%程度の甘くて白い果肉が特徴です。また、ペントザンやリグニンという物質が細胞壁に蓄積する影響で、シャリシャリという独特の食感を楽しむことができる果物です。

成分のおよそ90%は水分ですが、食物繊維、ソルビトール、カリウム、アスパラギン酸を豊富に含みます。食物繊維やソルビトールには、便秘を解消する効果があります。また、カリウムやアスパラギン酸には、過剰な塩分を排泄し、疲労回復を助ける効果があります。

栽培における大きな特徴としては、個体自身の花粉では果実が実らない性質(自家不和合性)が挙げられます。果実を実らせるためには、大部分の品種において、他品種のナシを混植する必要があります。

<交配親和性>果実が実りやすい組み合わせ
幸水、豊水、長十郎、大原紅のうち2品種の組み合わせ

<交配不親和性>受粉しても果実が実らない組み合わせ
幸水×新水  新高×豊水  新高×新興  菊水×二十世紀

<自家和合性>交配しなくても果実を実らせる品種
おさ二十世紀:突然変異により自家受粉が可能

下記の果樹の育て方も詳しく書いてありますので、凄く参考になります♪
タイトル:温州みかんの育て方
タイトル:イチジクの育て方
タイトル:バナナの育て方

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