月見草の育て方
月見草の育てる環境について
月見草には、手順の決まった育て方とか、栽培の仕方になにか厳密で難しく定められたものというものはなく、園芸の初心者であっても、或いは、多少、ずぼらな人であったとしても、特にこみいった手入れが必要ではないので、放っておいても、よほどのことがない限り、しっかりと育ってくれます。
それでも、いくつか育てるにあたり注意するべきことをあげるとするならば、まずは、日当たりの良い場所に置くということが肝要です。これは月見草に限ったことではなく、多くの植物に共通することではありますが、やはり、日陰にほっぽったままにしておくのと、
きちんと日当たりの良い場所に出してあげるのとでは、育ち方が全然違ってきます。そして、日当たりの良さに加えて、風通しの良い場所に置くというのが、理想的と言えるでしょう。月見草は、耐暑性、耐寒性共に充分ありますので、あとは、あまりじめじめした環境にならないよう、
ある程度の風通しを確保してあげさえすれば、あとは、それほど手間隙をかけずとも、自然と丈夫に、きれいに育ってくれることでしょう。なお、鉢植え、露地植え、共に問題ありませんので、それぞれのお宅の事情にあったもので育ててください。
また、苗を購入してきた場合、生育が旺盛なものは、既に根が鉢中に、ぎっちぎっちに張り巡らされているかと思いますので、露地植えにするか、もしくは、根に余裕を持たせられるよう、一回り大きな鉢植えに移し替えるなどして下さい。
月見草の種付けや水やり、肥料について
月見草は、晩秋まで花を咲かせ続けた後、種を付け、そして散らします。この種を使って翌年以降、新たな月見草を育てるというのも、園芸家の楽しみです。種まきは、発芽に適した温度が高いため(約25度くらい)、5月から6月くらいにかけて行います。
月見草の仲間というのは、一旦育てば、それほど手をかけずとも丈夫に育ってくれますが、ただ一つ、根を傷めると、途端に根付きにくくなるという性質を持っていて、そういった事情から、移植がしにくい植物であるとも言えます。ですので、種は菜園か鉢に直接まくか、
或いは、ビニールポットに数粒ほどまいて、様子を見ながら少しずつ間引いていき最終的に一本を残し、それから、土を崩さないよう、根を傷めないよう、慎重に鉢なり、露地なりに植え替えるようにします。種まきの場合、花が咲くまでには、丸一年以上かかりますので、
まずはビニールポットで苗をしっかりと作ることに注力して、これならもう大丈夫と見極めがついてから、植え替えを行うようにするのが失敗する可能性を出来る限り低く抑えるやり方と言えるでしょう。また、水やりについては、月見草は、やや湿り気のある土壌を好みますので、
土の表面が乾いてるようでしたら、水をたっぷりと与えるようにします。特に、真夏の時期は、あっという間に土が乾燥してしまいますので、こまめにチェックするようにして下さい。なお、肥料についてですが、元々この種類の植物は、やせ地でよく育っていたような種がほとんどですので、
肥料を多く与えてしまうと、却って逆効果で枯れてしまうことがあります。ですので、肥料は基本的に控えめにして与えすぎないようにし、植え付けの時にゆっくり効くタイプの肥料を少しと、後は追肥として3月と10月にそれぞれ一回ずつ、同じものを適量、株元に与える程度にとどめてください。
月見草の増やし方や害虫について
月見草の増やし方ですが、これは、先に書いた様に、種をまく方法と、あと一つは、株分けで増やす方法があります。月見草の根を傷めることは厳禁ですので、なるべく根にダメージを与えないよう、株分けと植え替えは、同時に行うようにして下さい。
鉢から抜いた株は、新芽数本を一株として地下茎ごと切り分けるようにします。鉢植えにする場合には、赤玉土(小粒)6に対して、腐葉土4の割合とした混合土を使用するのが良いでしょう。なお、株分けに適した時期は、3月、もしくは、9月です。また、月見草に付く害虫ですが、他の植物などと比べて、
それほど問題になるほどに虫が付くことはほとんどありません。強いて言うならば、春先に大量発生しやすいアブラムシに注意して、もしその姿を見かけたら、ただちに全ての虫を確実に捕り除くようにする、ということくらいです。あとは、ごく稀に、ハムシの仲間・アカバナトビハムシなどが発生することがあり、
そうなってしまうと、春から秋に至るまで、非常に長きに渡って葉を食害する害虫として園芸家を悩ますこととなります。幼虫は、ウジ虫っぽい形をした茶色の虫で、成虫になると、艶がかった黒い色をした、体長3mmを少し超える程度になる、甲虫です。この成虫は、飛んで跳ねてと、
とにかく逃げまわるので、手に皿を持ってそっと近づき、そこに落とすようにして捕殺するようにします。害虫が一旦発生してしまうと、虫を根絶やしにしない限り、植物に食害などを与えて、最悪、そのまま枯れてしまうこととなりますので、たとえ一匹でも害虫がいることを確認したならば、
面倒臭がらずに、一匹残らず全ての虫がいなくなるまで根気よく退治をして下さい。なお、月見草は、元々丈夫ということもあって、害虫だけでなく、病気にかかることもあまりなく、そういった面でも、園芸初心者などにもおすすめできる植物であると言えます。
月見草の歴史
月見草とは、アカバナ科マツヨイグサ属に属する多年草のことをいいます。原産地はメキシコで、江戸時代には日本にも渡来し、鑑賞用として好事家の間で育てられるようになりました。同じマツヨイグサ属のマツヨイグサ、オオマツヨイグサ、メマツヨイグサなどは、
本来は別種でしたが、現在では月見草というと、一般的に流通している種苗の量の多寡などから、むしろこれらを指すことの方が多くなっています。マツヨイグサ属の多くも、北米から南米あたりが原産地の植物で、原産地のみならず生息地についても、本来の月見草が生育する場所とよく似た環境となっています。
これらの植物は、かなり古い時代から主に北米や中国などで栽培されてきました。そもそもこれらはハーブとして、はるか昔から「自然の治療者」として大切にされてきました。その歴史は古く、一説によると、約7万年前に中米で確認されたのがはじめてとも言われます。
北アメリカのインディアンは、古代より何世紀にも渡ってこの草の全てをいろいろな疾病の治療薬として用い、たとえば、根を痔疾の治療や体力増進のために使い、種子も貴重な薬として、そして、腫れ物の治療や呼吸の改善などにも効果があるとして使用してきた長い歴史があります。
転機となったのは、1619年に「王の万能薬」として月見草がヨーロッパへと伝わったことで、それにより、すぐさま民間療法の重要な担い手となり、開拓移民達は、こぞって、この万能薬をヨーロッパへと輸送したのです。今日では、月見草は、葉や根やりも、むしろ、その種から抽出されるオイルによって、より、注目がなされるようになっています。
月見草の特徴
月見草の特徴の一つは、夕方に花が咲いて、そして朝には萎むという、少し変わった性質を持つ一日花という植物であるということで、これが月見草とか、その別称である「待宵草」の名の由来でもあります。日本に移入された種は、夏の初めから霜が降りはじめる晩秋にかけての、
非常に長い間、花を咲かせ続け、秋に種を実らせると、冬には枯れてしまう一年生の植物(越年草)がほとんどですが、中南米の原産地には、根茎を有する多年生の種もあるといいます。草丈は種により大きく異なりますが、高山植物である、チャボツキミソウなどの種では高さ10cm程にしかならない反面、
低地で育つ種の中には、草丈が3mにまで成長するものも存在します。葉は羽状中裂と呼ばれるもので、螺旋形が開花軸に対して付き、それが鋸歯を持つか、もしくは、深く裂ける、といった形状をとります。また、多くの種において、花は黄色の四弁花であり、種に関わらず、
めしべの先端が4つに割れるというのが最大の特徴です。なお、月見草の種子から抽出される月見草オイルには、健康補助食品等によく用いられる「γ-リノレン酸」が豊富に含まれていて、アトピー性皮膚炎に対する効果のほか、美肌効果、
生活習慣病を予防する効果などが期待されています。さらにこのオイルには、ホルモンバランスを整えるはたらきがあると考えられ、更年期症状や、月経前症候群(PMS)に対しても効果が見込めるものといわれています。その他に、花の抽出物等は、お茶として飲用されたり、
種子はスープに混ぜて飲まれたり、さらに、根などはピクルスとして食されるなど、この植物は、古より世界中で、観賞用としてよりも、むしろ食材や薬などとして人々の身近で今日まで使用され続けてきたと言えます。
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