ビヨウヤナギの育て方

ビヨウヤナギの育て方

ビヨウヤナギの生息地は中国ですが、仲間であるヒペリカム・オトギリソウ属には日本原産種もあります。薬草として用いられるオトギリソウやトモエソウなど20種があり、いずれも木ではなく草花です。

育てる環境について

どの種類でも、基本的な育て方は共通しています。成長が旺盛で樹高が1m以上になるので、鉢植えで購入した場合も庭植えにする方がよく育ちます。花を咲かせるためには日なたから半日陰の環境が必要です。植えつけの際には、日当たりをよく確認しましょう。

日陰に植えてしまうと枝ばかりが伸び、花つきが悪くなります。特に、さび病に弱いカリキナムやエルステッドは、秋に過湿になることのない、風通しのよい場所を選んで植えてください。カリキナムは多少日陰でも花を咲かせ、地下を伸びる吸枝で広がっていくため、グラウンドカバーにも向いています。

土壌は水はけがよく、極端に乾燥しない腐植質に富んだ土壌が適しています。植えつけは3~4月または9月下旬~10月が適当です。根鉢よりひと回り大きな穴を掘り、腐葉土や少量の完熟堆肥などを混ぜたものを入れた後、苗を植えつけます。植えつけたら根鉢の周りにたっぷり水を注ぎ、

棒などでつついて、根と植えた場所の土とをなじませます。枝が伸びすぎたり、株の形が気になったら剪定を行います。ビヨウヤナギは春に伸びた枝に花芽を作るため、剪定はその前までの冬~3月に行います。株を小さくまとめたい場合は、地面から20~30cmの高さで刈り込みます。

大きく育てたい場合は、伸びすぎた枝を刈り込んで形を整える程度にし、枯れ枝や花がつかなくなった古い枝を根元から切って取り除きます。カリキナムは枯れ枝を切る程度で、剪定はほぼ不要です。実を楽しむエルステッドは3月に枝を切り戻します。

種付けや水やり、肥料について

庭植えの場合、特に水やりは必要ありません。自然に降る雨だけでも十分です。しかし、極端に乾燥する夏の高温期には、朝か夕方の気温が比較的低い時間帯に水やりをします。また、暖かい時期に雨の降らない日があまりにも長く続いた場合も、様子を見て水を与えてください。

生育が始まる前の3月と、花が終わり、夏の暑い時期を過ぎた9月下旬~10月下旬にゆっくりと効くタイプの化成肥料や固形の油かすを与えます。生育前の3月に肥料を与える際は、窒素分を与えすぎないように気をつけます。窒素は「葉肥」とも言われており、

過剰に与えると枝と葉だけがどんどん成長し、花が咲かなくなったり貧弱になったりしてしまうことがあります。また、十分な成長土台がないままどんどん伸びてしまうので株が弱くなり、病虫害の被害に遭いやすくなります。花や実の結実に関係するリン酸や、

根の成長に影響するカリウムもバランスよく与えましょう。秋に与える化成肥料とは、窒素・リン酸・カリウムの肥料の3要素のひとつしか含まない単肥数種を化学的操作したもので、肥料の3要素のうち2種類以上を含むようにしたものをいいます。油かすは主に菜種油の絞りかすで、

肥料の3要素を含み、分解されてから効果を発揮するため効き目はゆっくりです。植物の生育途中に与える肥料を追肥といいます。追肥は速効性のあるものを使うことも多いですが、樹木のように長い時間をかけて育つものには長期間効果が続く肥料を使う方がよいこともあります。ビヨウヤナギの場合もこれに当たるので、肥料は表示によく気をつけて選びましょう。

増やし方や害虫について

さし木と株分けでふやすことができます。さし木は、花が咲く前の5~6月、新しい枝が堅くなりかける時期に、枝を長さ10cmほどで切り取ります。ついているつぼみを切り落とし、先端の葉4~6枚を残して他はすべて取り除きます。30分ほど水にさして水揚げしてから、

赤玉土小粒やさし木用土に葉が触れ合う程度の間隔で枝をさしていきます。その後、たっぷりと水をやり、風の当たらない日陰に置いて乾かさないように管理すると根が出てきます。株分けは、追肥を与えるのと同じくらいの時期の3~4月または9月下旬~10月に株を掘り上げて、

はさみなどで適当な大きさに分割してそれぞれ植えつけます。特に気をつけるべき害虫はありませんが、病気ではさび病に注意が必要です。特にカリキナムやエルステッドはさび病に侵されやすく、エルステッドは枯れてしまうこともあります。さび病は菌によって葉に茶色の斑点が出る病気です。

最初は白い小斑点ができ、やがてその部分が盛り上がってきて褐色になり、表皮が破れて黄色や赤褐色の粉が飛び散るようになります。落ちた葉についた菌は越冬し、一度症状が出ると毎年発生しやすくなります。窒素過多にせずバランスのよい肥料で丈夫に

育てることと、風通しをよくし、過湿にも注意することが予防するためには大切です。特に発生しやすい秋は風通しに気をつけ、落ちた葉はこまめに取り除きましょう。予防のために薬剤を使う場合は、発生時期の8月下旬~10月に3週間に1回程度散布します。

ビヨウヤナギの歴史

ビヨウヤナギは中国原産で、約300年前に日本に渡来し、古くから観賞用として栽培されてきました。漢字では「未央柳」、「美容柳」と書きますが、中国では金糸桃と呼ばれています。「未央柳」の名は、白居易の「長恨歌」に由来しています。玄宗皇帝が楊貴妃と過ごした地を訪れて、

太液の池の蓮花を楊貴妃の顔に、未央宮殿の柳を楊貴妃の眉にたとえて詠んだ「太液の芙蓉未央の柳此に対ひて如何にしてか涙垂れざむ」という一節に由来しています。繊細な雄しべのある美しい花と、柳に似た葉を持つこの木を、この故事にちなんで「未央柳」と呼ぶようになったといわれています。

ビヨウヤナギの生息地は中国ですが、仲間であるヒペリカム・オトギリソウ属には日本原産種もあります。薬草として用いられるオトギリソウやトモエソウなど20種があり、いずれも木ではなく草花です。オトギリソウは漢字では「弟切草」と書きます。

平安時代中期の花山院の御代に、代々伝わる薬草(オトギリソウ)でタカの傷を治していた鷹匠が、その秘密を他人に漏らしてしまい、それを知った鷹匠の兄は激昂して弟を切り、その血しぶきがオトギリソウに飛び散ったことに由来しています。この故事からも垣間見えますが、

オトギリソウは古くから切り傷の薬草として利用されてきました。同じようにビヨウヤナギにも、薬草として用いられてきた歴史があります。腰痛には煎じて飲んだり、根を乾燥させてお風呂に入れたりして用い、虫刺されには生の葉をすりつぶして患部に塗ると効果があるといわれています。

ビヨウヤナギの特徴

ビヨウヤナギは半常緑性の灌木で、5~7月頃に直径5cm程度で5枚の花弁を持つ黄色の花を咲かせます。特徴的なのはその長くたくさん突き出した雄しべです。よく見ると、雄しべは基部で5つの束になっていることがわかります。上向きの花の上に揺れる繊細な雄しべは優雅で美しく、

江戸時代から愛好されてきました。江戸時代には中国の影響か、別名桃金嬢とも呼ばれていました。高さは150cm程度まで伸び、細い幹が多く枝分かれし、株立ち状となります。葉は濃い緑色で、その上に黄色い花はよく映えます。やや垂れ下がる枝先と柔らかい葉が

ヤナギを連想させますが、ヤナギの仲間ではありません。株はあまり大きくならないので、宿根草と組み合わせて植えたり、庭に少しだけ空いたスペースに植えることもできます。近年は海外からさまざまな新しい品種が加わり、これらを総称して属名であるヒペリカムと呼ばれることも増えてきました。

現在見られるものには以下のような種類があります。矮性のカリキヌムは、庭木やグラウンドカバーとして栽培されることが多いです。ヒドコートは大輪の花を咲かせ、トリカラーはクリーム色と赤色とで縁取られた葉が特徴的です。

最近多く見かけるようになったのはエルステッドで、花は小さいですが赤色や黒色の実が美しい種類です。名前は知らなくても、最近はブーケや切り花としてこの実が使われていることがよくあるので、一度は目にしたことがある種類ではないでしょうか。

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