ミツマタの育て方
育てる環境について
生息地としては、関東以西の温暖地が適地であり、中国、四国地方での山間部に多く栽培されています。半陰性植物であり、土中に水が停滞するのと強烈な日光を嫌うため、北面の山腹が適しています。根が広く浅く張る性質なので極端に土が乾く場所も嫌います。南西の場合は高木と混植して木の陰を利用する方法がとられることがあります。
また風当たりが少なく排水の良好な土地を好みます。一般に山間の傾斜地で森林の多い地方は、平地よりも降雨量が多いため、春夏の植物生長期になると朝と夕方に濃霧に覆われるような場所も多く、このような地域が栽培に適しています。土質としては、一般に太古層・古生層・中世層が良いとされています。
花崗岩や斑岩が崩壊して生成した土も適しているとされています。具体的には徳島県太古層や高知県及び愛媛県中生層やその歴史は埴土、島根県と鳥取県の花崗岩や斑岩等です。以前は関東・中部地方、近畿・九州地方の各地でも栽培されていましたが、過疎化による高齢化によって生産者自身が減少し、
現在で岡山、鳥取、山口、高知、愛媛及び徳島の山間部のみとなってしまいました。一部、暖地の山野には野生化したものもあります。鉢植えにする場合、水はけのよい用土が前提で庭土と砂を半々に混ぜたものなどを利用します。
移植を嫌うので地植えにする場合、根の周りの土は落とさないで、水はけをよくするために山高になるよう植え付けします。根張りに対して枝の張りが大きい場合は地上部分が重くなりぐらぐらしてしまうので支柱を立てる必要があります。
種付けや水やり、肥料について
栽培方法には、普通栽培法と密植栽培法と2つの方法があります。密植法の場合、畑に密植して施肥栽培するため、その生育が極めて早くなります。この方法は、さらに直まき密植と移植密植とに分けられています。直まき密植は、畑にあぜを作り、種子を4月下旬~5月上旬頃に撒いていきます。
翌年の春頃、一列おきに全部取って、これを移植用の苗にします。もう一方の列は間引きをします。移植密植法は、傾斜の比較的緩やかな山畑に種を撒きます。地植え鉢植えの場合、種付けは、7月下旬頃に収穫した種子を砂と混ぜて土中に保存し、翌春の3~4月に撒くようにします。挿し木の場合には、落葉後に1年枝で分岐した部分を切り取ります。
そしてその先端を除いて、赤土に挿し木するようにします。鉢植えの場合、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。特に真夏は土が乾きやすいので、こまめな水やりが必要になってきます。地植えは2月頃に化成肥料を与えます。鉢植えの場合には、花の終わった直後と、花芽ができる前の6月頃に其々1回ずつ化成肥料を与えるようにします。
ミツマタの根はあまり分岐しないため粗いため、根の表皮が軟らかくて傷が付きやすい傾向にあります。根が傷ついた場合、その傷口が塞がり難いため、移植の難しい樹木でもあります。小さな苗でも根を乱暴に扱うと根付かないことがあるので注意が必要です。植え付けたら他の場所に移動できないと考えた方が良いでしょう。特に地植えにする場合は場所をよく考えて植えるようにしてください。
増やし方や害虫について
育て方としては、実生法、株分け法、挿し木法、埋幹法といたものがあります。最も主流な方法は実生法で、次に株分け法がとなっています。実生法の場合、その種子は、植付け後5~6年の生育の盛んな株から採取するのが最適です。乾燥してしまうと発芽力が落ちてしまうので注意が必要です。
実を結ぶのが少ないという場合には、実生苗に頼ることが出来ないため、このような場合に株分け法を採用します。母樹の根の一部に生じる不定芽が生育して根芽となることがあるのですが、これが根を持っているため苗木として使用します。実生法が難しい場合には、挿し木法が用いられる場合もありますが、これは3~4月頃排水の良好な土質で行います。
埋幹法はさし穂全体を地中に埋没させる方法です。苗床に15センチに切断した幹を埋めておくと芽を出してきます。この芽に根が着いているので、これを母幹から切り分けて苗とする方法です。害虫としては、カミキリムシの幼虫が幹の中に潜り込んで食い荒らすので、発見次第すぐに駆除するようにしましょう。
また剪定については、剪定してもあまり新梢を出さないため、基本的には剪定はあまり行なわない方が良いのは確かです。剪定する場合は、大きくなってきたら、下のほうの枝の分枝部まで切り戻して小さくするようにします。
三本のうちの一番長い枝を、元から間引いいてこじんまりさせるようにしますが、枝の中間で絶対に剪定しないよう注意してください。枝の切り残しをつくらず必ず元から切ることが大切です。剪定の時期は1~2月頃の開花前に行なうようにしましょう。
ミツマタの歴史
ミツマタ(三椏)は、中国原産で、冬に葉を落とすジンチョウゲ科の落葉性の低木です。枝が三つ叉に分かれるところから「ミツマタ」と呼ばれているのですが、見た目そのままで非常に説得力があり覚えやすい名前だと言えます。早春になると、その華やかな花で山裾を散歩する人の目を惹きつけています。
和紙の原料としてよく知られるのですが、その樹形のまとまりがよいうえ、花自体も美しいことから、庭木や鉢花、盆栽などでも栽培されることが多いようです。万葉集に三枝(さきくさ)とあり、これがミツマタのことであると言われています。柿元人麻呂の歌で「春さればまづ三枝(さきくさ)の幸くあれば後にも逢はなむな恋そ吾妹(わぎも)」というのがあります。
こうしたことから万葉集の時代には、既に日本に渡来していたとされています。日本の製紙技術は7世紀の始め高麗僧によってもたらされたと言われています。それ以前には麻の繊維が使われていたのですが、8世紀前半にはコウゾによる紙すきが行われるようになり、次いで8世紀後半にはガンピでの製紙が始まっています。
ミツマタで紙をすくようになったのは、それよりずっと遅れて18世紀の天明の頃と言われています。明治12年になると、ミツマタは強くて艶が有る上、栽培が容易な事から、大蔵省造幣局に紙幣として採用され、以来日本の紙幣の優秀性を誇っています。そのような事情から、造幣局と契約農家によって栽培されている場合もあります。
ミツマタの特徴
ミツマタの樹高は1m~2mです。まるい樹形になり、よく枝分かれするのが特徴です。秋になると枝の先端に花芽を作りはじめ、早春には小さな花を半球状にまとまって咲かせて芳香を出すようになります。花は側が白で内側が黄色になり、下方向に咲きます。見た目は小さな蜂の巣のような雰囲気があります。
花びらに見える部分は筒状の萼で、実際には花弁を持ってはいません。開花時期はまだ葉が出ておらず、花が葉っぱで隠れることがないので樹全体が色づいたようになり、綺麗な見た目をしています。園芸品種であるベニバナミツマタは花の内側が赤色になるため、また独特の美しさがあります。
中国大輪ミツマタは、枝が太くて花が大きく、咲いたときにボリュームがある外観です。ミツマタ属には4つの種類があって、日本で昔から自生しているのは一種のみとなっています。最近は散歩道の道端などで良く見らるようになりましたが、これは園芸品種のアカバナミツマタと呼ばれている品種です。ミツマタは漢方の生薬名で「新蒙花」(しんもうか)と呼ばれています。
効能としては解熱、消炎作用があり、眼病薬として緑内障、鳥目などに用いられています。また生け花においては、少し変わった使い方をされます。サラシミツマタという名前で呼ばれるもので、枝の皮を剥いで着色して使用されます。ミツマタの独特な枝のつくりと人工的な着色が、生け花を更に芸術的なものにし、存在感を演出することができるので、人気のアイテムとなっています。
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