風知草の育て方
風知草の育てる環境について
風知草は暑さにも寒さにも強く、雑草のように丈夫なので、育て方で特に苦労するところはありません。日陰でもよく育ちますが、本来は日当たりの良い場所を好みます。ただし真夏の日差しを浴びすぎると、枯れることはないにしても、葉が日焼けして色が悪くなることがあります。
とりわけ斑入りの品種などは、そのままでは観賞価値が低くなるため、鉢植えにしているなら夏場は半日陰に移動したほうが良いでしょう。庭に植えるなら、はじめから半日陰の花壇などが適しています。そのほうが葉の色も美しくなります。
とはいえ、ベニフウチソウなどは日に当たったほうが美しく紅葉するので、あくまで品種によりけりです。冬場は根で冬越しするため、マイナス15度でも大丈夫と言われています。雪が積もる庭でもそのままでよく、鉢植えの株は凍結が心配なら、鉢ごと庭に埋めて冬越しさせる方法もあります。
雪解けの庭から新しい芽が出てくるのも、季節感があって嬉しいものです。風知草はやや腰高の鉢に植えて育てるのが一般的で、これがガーデニング初心者にも向いていると言えます。水切れを防ぐため、および成長したときのことを考えて、
鉢は大き目のものを選ぶようにしてください。もちろん庭植えでも十分に楽しめますが、生命力が旺盛で伸びすぎるきらいがあり、こまめに手入れしないと見場が悪くなるかもしれません。また冬には枯れてしまうので、そのことも計算して庭の草木をアレンジする必要があります。
風知草の種付けや水やり、肥料について
風知草は頑健な植物ですが、乾燥にやや弱いという特徴があります。水が切れると、長い葉がくるくると丸まってしまいます。ただし水を与えれば、すぐ元に戻ります。水切れさせたまま放っておくと枯れてしまうので、葉が丸まったら直ちに水を与えましょう。
無論そうなる前に、土が乾燥したら十分な水をやるのが基本です。乾燥に弱い一方で、水はけの良い土地を好むという性質もあります。植えつける用土としては、市販の培養土をそのまま使うか、赤玉土・腐葉土・桐生砂を等量混ぜたものが適しています。
水はけの良い土に植えれば、自然と水切れを起こしやすくなります。特に夏場は乾燥しやすく、庭に植えてある場合は見過ごしてしまうことも多いので、朝晩の水やりを忘れないようにしましょう。風知草の栽培で手のかかるところといえば、この点だけかもしれません。
肥料はほとんど必要ありませんが、与えるなら春から夏にかけて、少量の固形肥料を1~2回に分けて施します。もともとよく伸びる植物なので、施肥したために茎が伸びすぎることがあります。基本的に水さえ十分なら、あまり面倒を見ないほうが丈夫に育つと言えます。
風知草は株分けで増やすのが一般的です。多くの園芸店では、いろいろな品種が苗の状態で販売されています。しかし種から増やすことも可能です。その場合は晩秋に、花穂をしごいて種を取ります。わざわざ種を蒔かなくても、こぼれた種から増えていくこともあります。
風知草の増やし方や害虫について
風知草は長い根を伸ばし、すぐに成長します。鉢植えにしている場合は、毎年3~4月ごろになったら植え替えを行なうのが望ましいでしょう。鉢から抜いたら土を落とし、腐った根は取り除いて、新しい用土に植え替えます。鉢植えから庭に植え替えるのも、この時期が適しています。
増えすぎた株は、株分けで増やすことができます。時期は冬か春が適当で、植え替えと一緒にすれば手間が省けます。密生した株をハサミで切り分け、別々に植え付けます。根は数cmぐらいに切っておくと、新しい根が生えやすくなります。風知草は野趣溢れるところが魅力のひとつで、
放っておいてもそれなりに鑑賞できる植物です。しかし成長が非常に早いため、場合によっては葉が繁りすぎて、庭が見苦しいと感じることもあります。これを防ぐには、5月ごろから伸びはじめる新芽を適当に間引きます。そうすれば草丈が低くなり、
全体の形を美しく整えることができます。また秋になると葉が枯れてくるので、根元から全部刈り取ってしまいます。風知草にはかかりやすい病気は特になく、害虫もほとんど発生しません。盆栽として念入りに育てる楽しみ方もありますが、
あまり難しい育て方をしないでよいため、初心者にも幅広い人気があります。ガーデニングの主役にするのは難しいかもしれませんが、色や柄のバリエーションが豊富で、和風の庭にも洋風の庭にも向いているので、一株あれば庭の表情を豊かにできるでしょう。
風知草の歴史
風知草はイネ科ウラハグサ属の植物です。別名をウラハグサ、またカゼグサとも言います。ウラハグサ属の植物は風知草ただ一種です。ウラハグサの名は葉が裏表逆になっていることから、またカゼグサの名はこの草で風を占ったという故事から来ています。
原産は日本で、日本固有種のひとつです。生息地は主に本州中部、神奈川県から和歌山県にかけての太平洋側で、山地や渓谷に沿った崖の上などに、たくさん固まって生えています。学名をハコネクロアといいますが、これは箱根の草という意味です。
箱根の近くでよく見られることから命名されました。名づけたのは日本植物学の父と呼ばれる牧野富太郎で、新属であるという論文を書いたのは1912年のことです。その後1930年に本田正次が、学名となるラテン語で記載文を書いています。そのため海外では学名にホンダの名が付けられています。
丈夫で手間がかからないため、日本では古くから、庭の下草に使われてきました。ただし華やかで見栄えのする草ではなく、それほど重視されていなかったようです。これが海外のガーデニング愛好家に知られると、オーナメンタルグラス(観賞価値のある草)の一種として人気を獲得しました。
そして近年のガーデニングブームに伴って、日本でも再評価されるようになりました。現在ではオーナメンタルグラスガーデンに用いられるほか、草物盆栽や鉢植え・苔玉として、そしてもちろん庭園の下草としても愛好されています。
風知草の特徴
風知草の草丈は大きいもので70cmほどになります。長くて硬い、節のある茎を地表に這わせ、水平方向に伸びていきます。崖から垂れ下がることもあります。葉は長さが最大25cm、幅が最大1cmほどです。こんもりと繁った姿は、かなり見ごたえがあります。
普通の植物は葉の表面のほうに光沢があり裏面は白っぽいものですが、風知草は裏面のほうが濃い緑色で光沢があります。この葉は付け根の部分で巻きつくようにねじれ、表と裏が反転しています。葉の裏が表のように見えることが、ウラハグサの名前の由来になっています。
また葉には斑の入ったものもあり、鑑賞用に栽培されています。風知草は花よりも葉を愛でる植物です。細い葉が風にたなびく様子には何とも言えぬ風情があり、昔から風流人の心をとらえてきました。花は夏から秋にかけて咲き、ススキの穂のような茶色をしています。
目立たない花ですが、わびさびの精神に通じているとも言えます。園芸店などで販売されているものには、普通の緑色をした風知草のほかに、鮮やかな黄色の葉をしたオウゴンフウチソウや、葉の縁が赤みを帯びたベニフウチソウなどの種類があります。
また斑入りの品種として代表的なものに、白い斑が入ったフイリフウチソウ、黄色の斑が入ったキンウラハグサ、白と黄色の斑が入ったシラキンウラハグサがあります。冬になると黄葉し、やがて地上部は枯れてしまいますが、翌年の春には再び伸びはじめる宿根草です。
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