フウランの育て方
フウランの育てる環境について
自生種があることからも分かるように、関東地方南部以西が栽培に適しています。一年を通して風通しが良く、明るめの日陰で育てるようにします。朝日が差し込む東側で栽培してあげると良いでしょう。冬には北風が当たらないように注意します。戸外では寒さのために休眠してしまいますが、
加湿した室内であれば冬も休眠モードに入らずに成長させることが可能です。ただし、休眠させないと徒長が崩れやすくなるので、なるべく避けたほうが良いです。ただし冬場に霜が降りるような土地では、室内管理のほうが良いです。室内の暖房をつけず、日当たりの良い場所において管理します。
霜にやられてしまうと弱ってしまうので、冬場は霜に気をつけるようにしましょう。フウランは森の中の樹木の幹にくっついて生育しているので、日光は必要ですが、真夏の直射日光のような強い日差しは適しません。日光が当たりすぎると、葉っぱが痛んでしまうこともあります。
基本的な置き場所としては、戸外の半日陰、もし直射日光が当たってしまうようならば50%遮光します。風蘭という名前の通り、風通しの良い場所を好む植物です。半木陰(直射日光は避ける)、風通しの良い場所、というポイントを覚えておきましょう。
通常の植物と異なり、培養土を使わないのが特徴です。フウランは根をミズゴケで巻いて育てるのが一般的な育て方です。ミズゴケが多すぎると湿気って根腐れを起こすことがあるので、水はけを良くする発泡スチロールや軽石、木炭などを入れて湿度調整します。
フウランの種付けや水やり、肥料について
暖かくなってきた4〜5月にミズゴケで根の部分を巻いて育てます。培養土は不要で、ミズゴケ、鉢を用意します。ミズゴケで根を包んだら、鉢に入れます。この時ミズゴケが多すぎると水持ちが良すぎて根腐れの可能性が高くなるので、発泡スチロールや木炭を鉢の底部に入れて水はけを良くするようにします。
鉢の底に敷き詰めるよりも、真ん中に長く立ててあげると良いです。もしくは、軽石を鉢の底に入れて水はけを良くするのでも構いません。植え替えして1週間は日当たりを弱めにして、風の強い場所も避けるようにします。植え替えは毎年必ず行います。
ミズゴケは古くなると腐ってきますから、新しいものに交換してあげましょう。用土にはミズゴケ、荒いパークチップなどを使って植えるほか、ヘゴ、流木、コルク板に直接着生させる方法もあります。ちなみに、後者の直接着生させる方法ならばミズゴケのような、
植え替え作業が不要なので楽です。水やりはミズゴケの表面が乾いてきて1〜2日後に与えるようにします。ヘゴや流木に着生させて育てているならば、毎日水やりを行います。冬は休眠モードに入るので、週に1回霧吹きで軽く湿らせる程度に抑えましょう。
肥料についてはほぼ不要です。どうしても与えたいのならば、5〜7月、9月に葉面に散布するタイプの肥料を月2回施します。最初の作業は4〜5月頃に行い、ミズゴケ栽培の場合には水は与えすぎないように気をつけて管理するのがポイントです。
フウランの増やし方や害虫について
株分けで増やすことが出来ます。根元から子株が出てくるので、その子株がある程度大きくなったら株分け出来ます。種を採取して無菌培養にすれば育てることも可能ですが、実生栽培(種から育てる)は初心者にはかなり難しいので、増やしたいならば株分けした方が確実でしょう。
株が大きくなってくると芽が分かれている部分で切り分けることが出来ます。この時、株1つに対して最低でも3本の根がついているものを選びましょう。手では切れない硬さなので、園芸用のはさみを使って切り取るようにします。花が終わった後に花茎を切り取る(花茎切り)作業の時に、
なるべく花芽が小さいうちに切り取っておくと増やしやすくなります。比較的病気や害虫には強いですが、屋外栽培していると春〜秋にかけてナメクジが発生することがあります。ナメクジがつくと葉っぱが食べられて形が悪くなってしまうので、気をつけましょう。
また、通気性が悪い環境だと、カイガラムシやハダニがつくこともあります。特に春の暖かい時期になると発生しやすくなるので、予防のために薬剤散布をしておくようにします。ちなみに、ミズゴケ栽培ならば霧吹きを使って葉っぱがに直接水をかけてあげると、
ハダニを吹き飛ばして駆除することが出来ます。霧吹きで葉っぱに水をかけることで保水効果もありますし、ハダニ対策にもなり一石二鳥です。春以降は霧吹きを使って、定期的に水やり兼ハダニ対策を行うと良いでしょう。
フウランの歴史
原産地は日本(関東南部・以西)、朝鮮半島、中国南部です。ラン科のフウラン属に分類され、日本では江戸時代から園芸植物として愛されていました。特に伝統的な園芸品種をまとめて、風貴蘭(フウキラン)と呼ぶこともあります。和名は風蘭(フウラン)となっています。
和名の由来は、種が風に乗って飛んでいく様を表したとされています。フウランの人気が高かったのは、香りが良い、花が綺麗、葉っぱも鑑賞に適する、という条件が揃っていたからです。生育するスピードが遅めで、変形咲きや斑入りの葉がついたものは通常よりも高値で取引されたということです。
東アジアを生息地としているフウランは、温暖な土地の木に着生します。チューブ状に変化した花びらの一部(距)に蜜を溜めます。蛾の仲間が蜜を求めて口吻を距に差し込み、頭に花粉がつき、次に他のフウランの花に飛んで行った時に受粉します。
フウランの距の長さは、蛾の口吻の長さに合わせて進化したと考えられています。つまり、受粉をより確実にするために最適な距の長さに発達したということです。他にも、蛾の活動時間帯である夜でも目立つような白色の花色をしていることや、
夜に花の香りが強くなることなどからも、夜行性の蛾に合わせてフウランが進化していった裏付けと考えられます。現在では環境省のレッドリストに入っており、自然種は絶滅危惧種の2類に指定されています。自生しているのは関東南部、以西の土地です。
フウランの特徴
成長がとても遅いのが特徴です。年間に茎に2〜3枚の葉が生える程度で、大きな株は大変貴重です。ちなみに、野生種はすでに環境省が絶滅危惧種に指定していますが、日本では関東南部・以西で自生しています。うどんのような白くて太い気根(地上部から空気中に出る根)を発達させて、
それを長く伸ばして樹木や岩の上に着生します。常緑の多年草で、ラン科の山野草に分類されます。茎は根元付近でまばらに枝分かれして、株が立ったような姿勢になります。葉は堅く、細長い形をしており、2列に並びます。花がつくのはこの葉の脇からです。
花茎と呼ばれる細長い部分に、数輪の花が穂のようにつきます。花には甘い香りがあり、夜になると一層香りが強くなります。開花期は6〜8月です。葉は分厚くて肉質で、断面がV字型に窪んでいます。花冠の付け根が後ろに飛び出した距(きょ)という部分があるのが特徴的で、
距があることから全体の姿勢がゆるく湾曲して垂れ下がったような形になります。花は基本的に白色で、純白の美しさがあります。フウランの実は花の後にさく果(熟すると下部が裂けて種子が散布される果実)で、これにより個体を増やしています。
一般的に園芸用として品種改良されているフウランを育てるのは、それほど難しくはありません。過湿を避けて、ナメクジなどの害虫に気をつけて予防や早めに駆除すれば、楽しむことが出来ます。大きさも10〜15cmほどで手入れしやすいサイズです。
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