ニセアカシアの育て方
育てる環境について
日当たりの良い場所であれば、根に共生している根粒菌の働きで空気中の窒素を固定できるため、痩せた土地でも栽培することができます。また適応力が強いので、強い西日が当たる乾燥した場所や湿り気のある土でも生育することができるので、育て方は簡単です。
木は直立するので、狭いスペースでも植えることもできます。住宅地の場合樹高は3m位まで成長し、木が若いうちは曲がりやすいので、支柱を付けてまっすぐにします。コンパクトに収めたい場合は、枝を短く切ります。12月または2月から3月上旬に、
樹冠から飛び出ている枝を切り詰めて剪定します。また成木の場合落葉期に一気に強めに剪定する必要があります。初夏にはすぐに伸びてしまうので、秋まで伸びすぎた枝を整えていきます。枝が風でおれやすいので、台風シーズン前に伸びすぎた枝をある程度剪定する方が良いでしょう。
ただニセアカシアは、地面に植えてしまうと根が浅く長く延びるので、本来庭木として使うには性質が強すぎて扱いがむずかしい品種です。丈も将来は十数mの高さになり幹も太くなります。地上部の大きさを剪定して制限しても根までは手が届かず、
年々広く深く育っていくので、育てる場合将来問題が起きないかよく検討する必要があります。庭に植えた場合、庭の広さによっては根が建物の基礎にもぐったり、ライフラインの配管の上下に張り、配管を持ち上げる可能性もあります。
よほど土地の広い家から離れた場所でなければ、地植えはおすすめできません。鉢植えの場合は、巨大な鉢に植える必要があります。鉢穴から根が逃げ出すと、地植えと同じ問題が起きるので、コンクリートなどの地面のない所に置く必要があります。
種付けや水やり、肥料について
庭植えでは、雨水だけで生育することができます。ですから水やりの必要はありません。鉢植えの場合は、夏場の水きれに注意する必要があります。やせ地でもよく育ち、水はけの良い肥沃な土壌に植えます。日当たりが悪くなると花付きがわるくなります。
半日蔭だと思ったように育たない場合があります。地下茎で増えることがあるので、不要なら切り取ります。赤玉土、鹿沼土を主体に黒土や腐葉土などを混ぜた、通気性の良い土が適しています。マメ科に多い根瘤菌という金を根に持っているため、
空気中の窒素を地中に固定化する能力に優れています。そのため栄養分の少ない荒れた土地でもよく育つ反面、その繁殖力で在来種の生態系を侵食してしまうことになります。一度植えると根絶は難しく、切っても切っても生えてくるほどの繁殖力です。
また「アレロパシー」という他の植物の生長を阻害する物質を分泌するため、日本古来の生態系をかえてしまう恐れが心配されています。風に弱く倒れやすいため林業には邪魔になり、河川周辺に植えた場合洪水の際に流木となって橋梁を損傷する可能性もあり、
そのため特定外来生物に指定されようとしています。ニセアカシアの蜂蜜は上品で癖がなく高級品として人気があります。年々減少傾向にあり流通量は全体の7~9%ほどしかありません。九州を除く国内では、ニセアカシアを蜜源として養蜂を営む養蜂家が多くいますが、特定外来生物に指定された場合、
この養蜂家が廃業に追い込まれる可能性があるためまだ指定はされていないのが現状です。もし特定外来生物として指定されてしまえば、状況によっては強制的な防除の対象になり、許可なく新たに導入などができなくなり、違反すると厳しい罰則が待っています。
増やし方や害虫について
ニセアカシアの基本的な増殖法は種からです。花後豆の鞘が付き、それが熟すとはじけて種がとびます。その落ちた種の発芽率はかなり高く、増やすのは簡単に行えます。ただかなり離れた場所に落ちた種からも芽が出ます。もし花房を摘み取れないほど大きく成長してしまった場合、
毎年庭にたくさん芽がでることになります。これを抜くだけでも大変ですが、その種が近所にまで飛んでしまった場合、迷惑をかけることになります。知らずに放置してしまうと根が張り抜きづらい状況になってしまいます。現在地面に植えている場合、
掘って大きな鉢に植え替える方が、将来トラブルになりづらくなるのでおすすめします。繁殖力が強く、近くで他の木が育たないなど、日本在来の木の脅威となっているので、現在ではわざわざ駆除しているところもあるくらいです。個人で育てるのはまだ許されていますが、
いつ禁止樹木になるかわからない事情のある木なので、たくさん増やしたり、地面に植えたりするのは注意が必要です。褐斑病、すす病などの病気になりやすく、ドクガ、マイマイガ、アメリカシロヒトリ、アブラムシなど生育期に発生します。
褐斑病は、発病初期には褐色の小さな斑点がぽつぽつと発生します。それが同心円状に斑点が広がっていき、斑点の上に黒い粒々がみられるようになります。すす病は、葉や枝、幹などの表面が黒いすすのようなもので覆われてしまい、美観が損なわれるだけでなく、
葉がすす病で覆われると光合成が阻害され生育もわるくなります。またこの他にも、ハリエンジュハベリマキタマバエという外来種の害虫が付くことがあります。このハエが付くと多くの葉が変形・変色することがあります。
ニセアカシアの歴史
ニセアカシアは北米原産のマメ科ハリエンジュ属の落葉高木です。北アメリカを生息地としていますが、ヨーロッパや日本など世界各地に移植され、現在では野生化しています。和名はハリエンジュ。日本には1873年に渡来し、街路樹や公園樹、砂防・土止めなどに植栽されていましたが、
現在では生態系を壊す外来種として危険視されるようになってしまいました。明治期に日本に輸入された当初、ニセアカシアをアカシアと呼んでいましたが、のちに本来のアカシアの仲間が輸入されるようになり、ニセアカシアと呼ぶようになりました。
本来のアカシアはサバンナのような乾燥地に生え、たくさんのおしべを持ち、花弁がおしべよりも小さいなどニセアカシアとは全く別の種類です。材は芯材部が黄緑、辺材部は黄色で、とても硬く腐食に強い。そのため、枕木や木釘、木炭、船材として利用されてきました。
また10年以上たった材は火力が強いため薪炭材として使用されます。白い芳香のある花を咲かせるニセアカシアには、花蜂のような昆虫がどこに口を差し込んだらよいかの目印として、旗弁の基部には黄色の斑点が用意されています。花は天ぷらで食べたり、アカシア酒として飲まれたりしますが、
花以外の部位にはすべて毒があるので、食べるには適していません。樹皮を食べた馬がニセアカシア中毒になった例もあり、人でも子供が樹皮を噛んで中毒になった例もあります。中毒症状は、消化器系の異常と神経症状がみられ、腸管運動の低下、便秘や、興奮と沈欝の反復、全身の筋肉の痙攣、舌麻痺などがあります。
ニセアカシアの特徴
樹高は20~25mになり、葉は初夏には白色の総状花序で蝶形花を垂らします。ニセアカシアの葉は奇数羽状複葉で、一つの葉が多数のパーツ(小葉)に分かれています。葉の中央にある軸の左右に5~10対の小葉が対生してついています。小葉はたまご形または楕円形で、長さ3㎝前後、先は円形になります。
5~6月に白い蝶形の花を10~15㎝ほどの房状に大量に咲かせます。きれいな花が咲くことから観賞用として価値が高く、街路樹や公園などに使用されることが多くあります。ただ風で倒れやすいこともあり、庭木にはあまり向かない品種です。葉、果実、樹皮には毒性があるので、注意が必要です。
成長が早く、他の木本類が生育できない痩せた土地でも育つので、緑化資材として知られています。このため古くから砂防、治山などの現場で活用されており、日本の禿山、煙害地などの復旧に大きく貢献してきた樹でもあります。
また北海道では耕作放棄地などの管理が放棄された土地にニセアカシアが広く分布しています。また材が堅くゆっくり燃焼し、火持ちが良いことから薪炭材として利用されてきました。1950年代までは、一般の家庭で暖房、炊事、風呂の焚き付けに使う火力として多く使用されていました。
花は藤の花のような感じで房状に白い蝶形の花をたくさんつけます。この花には甘い香りがありこの花からとれる蜂蜜は高級品です。花の後にできる実は、無毛の幅広い線形で、熟すと2片に裂けます。長さは8㎝ほどで、平たい鞘に包まれて4~5個の豆ができます。
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