小松菜の育て方
小松菜の育て方
何を栽培するにしてもまずはその野菜に合った土を調整します。小松菜は、中性から少し酸性ぎみのpH6.0~6.5の土を作ります。古い土や痩せた土、硬くなった土はよく耕し空気を含ませます。ザルを使って古い根っこやゴミ、異物などを取り除きます。黒いビニール袋に入れて日の当たる所に放置して土の殺菌を必要とする場合もあります。黒いビニール袋に入れると中の温度が上がり殺菌されます。
次に有機物を多く含んだ堆肥を施します。良い土の条件は、通気性と排水性が良いことと。保水性と保肥性に優れていること。清潔で異物が無く根が十分に張れること。微生物が多くいること。それぞれの野菜に適した酸度であること。堆肥は、日の当たらない場所で落ち葉や枯れ草、乾燥鶏糞や石灰窒素を積んで作ります。
また、市販のコンポストや手製のコンポストを利用して家庭用の生ごみのリサイクルで堆肥を作ったり、ミミズを利用したコンポストもあります。堆肥は、出来上がるまで夏で2~3か月、冬で5~6か月かかります。場所を決めて常時作っていきます。土は、中性に近い状態に保つと土壌の微生物が増えます。微生物を増やす液体の酵素なども販売されています。酸度を調整するには、消石灰、苦土石灰、有機石灰を施します。
卵の殻やカキの殻なども同じ作用をします。消石灰は1㎡深さ10cmに対して80~100g、苦土石灰や有機石灰は、100~150gを施すとpHが1上がります。pHを確かめながら石灰を混ぜる量を調整します。蒔いたらすぐに土と混ぜます。雨に当たると固まりますから注意します。そのまま10日前後放置して土を馴染ませます。アルカリ性の土壌を中和するには、ピートモスや鹿沼土の細かい粒を混ぜます。
栄養を含んだ堆肥は牛糞、鶏糞、ぼかし肥がありますが、小松菜には牛糞の成分が適しています。土をふかふかにする堆肥は腐葉土、バーク堆肥、ピートモスがありますが、腐葉土は全般に使える万能堆肥です。充分に腐らせて熟したものを使います。ピートモスはpHの調整に使います。土の準備ができたら次は、肥料を施します。種付け前に土全体に混ぜます。
肥料は、窒素、リン酸、カリウムのバランスによって、トマトのように実を採取して食べるものや小松菜やほうれん草、白菜のように主に葉を食べるもの、大根やニンジンのように根を食べるものなどによって適した肥料があります。窒素は植物を成長させる栄養で、葉を大きくします。窒素が多すぎる場合は、徒長して弱くなり病害虫に侵されやすくなります。不足した場合は発育不良となります。リン酸は開花や結実に必要な栄養です。不足すると結実が遅れたり収穫量が減ります。
カリウムは根の発育に関係しています。土中に流れ出してしまいますから少しずつ肥料を足すと効果が上がります。その野菜に適さない肥料を使うと実がならなかったり収穫が遅れたり、葉が育たなかったりします。使い分けには注意します。小松菜に適した肥料は、窒素2.0~2.5、リン酸1.0~5.0、カリウム1.0~2.5のバランスの肥料です。追肥は化成肥料を時々施します。米ぬかや米のとぎ汁はこのバランスに近いため水やりの時に追肥のように利用することができます。
小松菜の種付け
小松菜の種の発芽率は80%前後で失敗の少ない野菜です。種付けから収穫までの栽培の日数は、夏は20日前後で秋から冬の種付けは80~90日かかります。秋から冬の種付けは、発芽温度にする為にプランターカバーや上下半分に切ったペットボトルなどで簡易的なビニールハウスの状態にしておくと収穫までの日数が短縮されます。
40cm位の間隔にすじ蒔きをします。種が細かいため1粒ずつ植えるのではなく一列に適当に蒔いてしまいます。一週間もすると発芽してくるので、混み合った部分を間引き、苗の間隔を開けます。間引きしたものは、柔らかく風味もありますから生食でサラダの飾りやみそ汁に入れたりと利用できます。成長に応じて再度間引くこともできます。
小松菜の種を蒔く時期
太平洋に面した暖地や中間地での栽培は、種付けの可能な期間が3月中、下旬から7月までの品種や7月から11月まで可能な品種など品種を選ばず育てられます。次から次へと収穫できますから時期をずらした育て方もできます。夏が過ぎてからもプランターカバーなどで時期を調整することもできます。一回の収穫量を考えて種付けをするとよいでしょう。
東北の寒冷地や北海道での育て方は、冬の到来が早いため種付けは、4月中旬以降から7月頃までです。発芽の温度は20度~25度ですから、家庭菜園の場合は日当たりのよい室内で水耕栽培で楽しむこともアイデアのひとつです。水耕栽培では液肥を利用します。東北の寒冷地や北海道、山間部などは日照時間の関係もありますから、ビニールハウスやプランターカバーで温度を保つ方法を考えた育て方で収穫までの温度を保ったり、日数を短縮する工夫が必要です。
小松菜の歴史
小松菜の原産地は、南ヨーロッパ地中海沿岸と言われています。中国などを経て江戸時代の頃から小松川周辺から栽培が始まり、以降関西や九州方面に広がり、日本の各地で一般的に栽培され出した説が有力です。小松菜の生息地で有名なのは、特産物にもなっている東京の江戸川区小松川町です。
八代将軍徳川吉宗が鷹狩の際に南葛飾郡の小松村(現在の東京都江戸川区小松川町)に立ち寄られた時、小松菜の入った青菜汁を食べ気に入ったことからこの地名から小松菜と命名したのが由来とされています。この江戸川の周辺や東京郊外の八王子市、武蔵村山市、町田市、府中市、立川市などでは古くから栽培され、神奈川県平塚市などに栽培地域は広がっています。
最近では、関西や九州などでも栽培されるようになっています。ホウレン草のようなアクが少なく癖のない味は自然と栽培地を広げていきました。アブラナ科アブラナ属の小松菜の仲間は、福島県の信夫菜や新潟県の大崎菜、九州の高菜、京野菜の代表の京菜、長野県の野沢菜などがあります。
小松菜の特徴
小松菜は耐病性に優れていて無農薬での栽培も可能ですし、水耕栽培でもできます。本来冬の緑黄色野菜ですから、耐寒性も強く霜が降りたり雪が被ってもよく耐えます。葉物の野菜の中では、比較的育てやすい緑黄色野菜です。季節によって露地栽培でもハウス栽培でも年間を通して栽培も可能です。品種改良もとても盛んで、葉が縮れている品種や生食用でも葉の柔らかい品種、栽培可能な期間が長い品種や紫がかった葉色の品種などが作られています。
市場への出荷はもとより農産物の直売所でも販売していますし、比較的栽培が簡単なためプランターでも楽しめます。究極の地産地消である家庭菜園の初心者にも適しています。小松菜の種の生産は、1980年頃から国内では、品種改良に適した生産地が減少しました。受粉による品種の交雑がない土地を求めて種苗業者はイタリアやアメリカ、ニュージーランドやオーストラリアなどに送り栽培するようになりました。その為、海外で採取した種が多くを占めています。
生産地はそれぞれの種に明記されています。また、国内では人手不足や人件費、高齢化などにより難しくなっていることも海外生産の原因にもなっています。長年の農家の後継者不足は、今まで農業の経験のない人の受け入れを積極的に推進しています。農地付きの借家などを格安で提供し、都会から地方への移住をアピールしています。人口の減少した地域での農業への従事が増えていくことで小松菜の栽培もより広がる可能性があります。
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