ハエトリグサの育て方
ハエトリグサの育てる環境について
ハエトリグサは、よく日の当たる風通しの良い所で育てます。ただし高温には弱いので、夏場は涼しい日陰にて管理するようにします。また、ハエトリグサは温帯の湿地に生息する植物ですので、水を非常に好みます。常に水分がある状態にしておくことが育て方のコツです。
十分に湿らせた水苔をそのまま使用してもいいですし、ピートモスなどに水苔を混ぜ込んで保湿性を高めたものを使用するとよいでしょう。ただし水苔は腐りやすいので年に一度新しい水苔に取り替えて上げる必要があります。古い水苔をピンセット等で丁寧に落として、新しい水苔に植えかえてあげます。
適期は2月〜3月頃の休眠期になります。風が強いと乾燥してしまいますので、強い風には当てないように注意します。耐寒性があるため、0度くらいの寒さでも大丈夫です。冬の間は休眠期に入り、葉が枯れて落ちていきます。この時期に暖房の効いた部屋などで、
管理するとあまり良くないと言われています。思い切ってある程度の寒さの中で管理することで葉をしっかりと休ませ、エネルギーを溜め込ませることが出来ます。中途半端な温度の中で育てると、春先の芽吹きにマイナスの影響を与えてしまいます。
地面が凍らない程度の寒さの場所であれば戸外で越冬させることも可能です。
その際には、雨が直接当たらない場所に置き、霜に注意するようにしましょう。その際も常に水気のある状態を保つようにしましょう。冬場は乾燥しやすいので特に注意が必要です。
種付けや水やり、肥料について
花が咲いた後には黒い小さな種をつけることがあります。種は保存がきかないので採取したらすぐに植えてあげましょう。ハエトリグサの育て方で一番重要なのは水やりです。常に水分を必要とする植物ですので、こまめに水を与えてあげますが、
一般的な観葉植物のような水やりではすぐに水切れを起こしてしまいます。その為、受け皿を用意し、そこに1〜2センチほど水を張って、底から水分を吸収させる「腰水」という方法を利用します。あまり深く水を溜めてしまうと酸素不足になってしまいますので、
浅めにキープしておくことがポイントです。受け皿の水が減ってきたら、その都度受け皿の方に水を追加していきます。夏場などは水が傷みやすくなるので、こまめに受け皿の中の水を交換してあげましょう。水温が上がりすぎるのを防ぐためにもあまり暑くなる場所は避けて管理します。
たまに株元から水を掛けてあげることによって、水苔内の老廃物を排出し、酸素を含ませることが出来ます。その際、水がドバドバ葉に当たらないよう、そっと行うようにしましょう。ハエトリグサは、自分で捕食して養分を得る植物ですので基本的に肥料を必要としません。
あまり肥料を与えるとかえって弱めてしまいます。与える際は薄めた液体肥料を月に1度位の割合で与える程度で大丈夫です。もちろん、化成肥料よりは虫から養分を得る方がお勧めですが、根からも十分に栄養分を摂取することが出来ますので、無理に虫を与える必要もありません。
増やし方や害虫について
種まきか、株分けによって増やすことが出来ます。種まきで増やす場合は12月〜4月頃が適期です。親株と同様、冬の間はしっかりと休眠させてエネルギーを蓄える方が元気な芽になりますので、濡らした種を冷蔵庫などに1ヶ月ほど入れておき、十分に低温処理をした後で蒔くようにしましょう。
親株と同様、保湿性の高い用土に蒔き、乾燥しないように注意しながら管理してあげるとその内発芽します。ただし、種から育てた場合には親株と同じくらいの大きさになるまでは数年かかります。株分けで増やす場合、12月から2月の休眠期に行うようにします。
球根が2〜3倍の数に増えますので、植えかえをする際に一緒に分けてあげるとよいでしょう。一株につき葉が3枚ほどの割合になるように、丁寧に手で分けて植えつけます。種から増やすよりはこちらで増やした方が簡単で早く育ちます。ハエトリグサは元々が食虫植物ですので、
害虫についてはあまり心配ありません。アブラムシ程度なら自分で捕食してしまいます。あまり頻繁に虫が来るような場所ではかえって葉を傷めてしまいますので、ライトなど、虫が寄ってきそうな場所には置かないようにしましょう。ハエトリグサは、ハエなどの小さな虫だけではなく、
ナメクジなどの大きめの害虫も捕食する場合があります。しかし、葉の大きさに対して大きめのナメクジだと捕食しきれない場合があります。そうなると葉が枯れてしまいますし、株自体にも悪影響ですので、早めに葉ごと切り取って処理してあげるようにしましょう。
ハエトリグサの歴史
ハエトリグサは北アメリカを原産とするモウセンゴケ科・ディオネア属の食虫植物です。開いた貝殻のような形の葉が印象的で、その周りにはトゲがついています。食虫植物と聞けばこのハエトリグサを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ハエトリソウやハエジゴクとも呼ばれます。
二枚の葉に細い感覚毛が付いており、この毛の部分をビーナスのまつげに例えて洋名ではVenus Flytrapと呼ばれています。「フライトラップ」というのは、そのまま「ハエ取り器」という意味です。粘膜を分泌させるのではなく、可動式の罠を使って捕食するタイプになります。
元々の原種は1種類のみとされており、それから様々な園芸品種が生まれてきました。葉の広がり方が違ったり、赤みがかった葉をつけるもの、トゲの形が異なるものなど様々です。ハエトリグサの生息地は北アメリカのノースカロライナ州やサウスカロライナ州といったごく一部ですので、
非常に貴重な植物といえます。ハエトリグサが自生している地域は保護区に指定されていますし、現在ワシントン条約によってハエトリグサの球根の輸出入が禁止されているほどです。しかし禁止される以前に世界中で栽培、品種改良をされていたので、
日本でも比較的容易に入手することが出来ます。初夏には園芸店などでたくさん販売されますし、最近ではインターネットで購入することも出来ます。あまり大きくならない植物ですので、鉢植えにして観賞されることが殆どです。
ハエトリグサの特徴
ハエトリグサはその名の通り、蠅などの昆虫を捕食して栄養にする食虫植物です。食虫植物にも色々なタイプがありますが、ハエトリグサは大きく広げた葉を罠にして補食します。葉の内側には3〜4本ほどの小さな感覚毛を持っており、その部分に2回以上刺激が加わると瞬時に葉を閉じる仕組みになっています。
2度の刺激を必要とする理由は、雨粒などが当たった時に間違えて閉じないようにするためです。誤作動で葉を閉じてしまったら1日以上葉を開きません。他の種類の食虫植物は昆虫を誘い寄せる成分を出して補食したりすることが多いので、めったに捕食の瞬間をみることは出来ませんが、
ハエトリグサに至っては捕食する瞬間を目で見ることが可能です。とはいえ、葉を閉じるためにはたくさんのエネルギーを必要とするため、面白がって頻繁に葉を刺激してしまうと葉が弱ってしまうだけではなく、株ごと枯れてしまうこともありますので注意しましょう。
虫を補食しなくとも育つので無理に虫を与える必要もありません。一度葉を閉じると、葉の周りのトゲが互い違いに噛み合って、中の虫を逃がさないようになっています。その際、両側からの葉の圧力で捕まえた虫を押しつぶしていきます。
その後じっくりと日にちをかけて虫の養分を吸収し、1週間〜10日ほど経過したら再び葉を開いて死骸を捨てます。一枚の葉が虫を捕まえる回数は3〜4回程と言われています。ある程度捕食をした葉はエネルギー不足で葉を閉じなくなります。
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