コチョウランの育て方
育て方の基本
<開花株の育て方>
①花が咲いている鉢を購入したら、ラッピング材は取り除き、直射日光の当たらない風通しの良い室内に置きましょう。レースのカーテン越しが適当で、18~27度が適温の目安です。夜になったら、部屋の暖かい場所へ移動します。開花株を15度以上に保てない場合、成長が止まって花が咲きません。
②水やりは、植え込み材が乾いているのを確認してから、室温と同じくらいの温度の水をコップ1杯与えて、受け皿の水は捨ててください。季節や株の状態に合わせ、3~10日に1度を目安にすると良いでしょう。鉢の中が乾いていない状態で水を与えると、根腐れの原因になります。また、暖房の効いた部屋に置く場合は、水やり以外に1日数回霧吹きで加湿しましょう。
③風になびいたカーテンや、エアコンの風が直接当たらないよう注意しましょう。しおれた花や傷んだ葉を見つけたら、すぐに取り除いてください。
<苗から栽培する育て方>
苗の種類には、花同士の交配で種付けされた「実生苗」と、優良な個体をバイオ技術で増殖させた「メリクロン苗」があります。実生苗は、株から採れた花粉を同じ株のめしべに種付けするセルフ苗と、別々の株同士で種付けするシブリング苗に分けられます。種付けの方法によって、実生苗は花の形や色に個体差が表れ、メリクロン苗は親株同様の個体が育つという特徴があります。
①コチョウランの苗は、内部が無菌状態になっているフラスコ苗を購入します。直射日光に当てないように気をつけてください。
②購入した苗をフラスコから取り出して、寒天を水で洗い落します。植え込み材を使って苗を寄せ植えしたら、専用の薬剤で殺菌しておきましょう。
③株の成長に合わせて鉢を大きくしていくと、およそ10ヶ月程度で、たくさんの根が生えてきます。その後、花芽が上に伸びてきたら支柱で支えてあげましょう。
④温度や湿度の管理は、<開花株の育て方>と同様に行ってください。管理が不十分な場合は花の寿命が短くなりますので、注意が必要です。
植え替えの方法
<水苔を使った栽培>
①コチョウランの植え替えは、4~5月に行います。鉢は、素焼き鉢を使用してください。コチョウランの花が落ちたら、消毒したハサミで花芽の根元からカットしましょう。(早く花を楽しみたい場合は、花芽の下から3節の2cm上でカットします。)
②全ての花芽をカットしたら、植木鉢から根ごと抜き取り、古い根や植え込み材を優しくほぐして取り除きます。根腐れやカビを防ぐため、1株ずつ分けて植え替えましょう。
③株の根を広げるようにして、たっぷりと吸水させた新しい水苔で巻き込みます。新しい鉢にやっと入るくらいの水苔を巻きつけてから、鉢のふち2cm下を目安に親指を使って押し込みます。
④細菌が入るのを防ぐため、最初の2~3週間は水を与えません。その後は10日に1度の割合で、室温程度の水をコップ1杯与えましょう。
⑤植え替え後は、日光の当直射たらない明るい室内に置きます。晩秋になると花茎が伸びてきますので、支柱を添えてあげましょう。
<プレサブ(プレミアムサブソレート)を使った栽培>
①鉢は、ポリポットを使用します。水苔を使った栽培①~②と同様に花芽をカットして、1株ずつ分けてください。
②ポリポットにプレサブをひとつかみ入れ、その上に15粒程度のマグアンプ肥料を入れます。その上にもう一度、プレサブひとつかみを重ねてからコチョウランの株を入れます。
③株や根のまわりに、プレサブを追加して敷き詰めます。軽くトントンしながら、割り箸などを使って隙間のないように押し込んでから、ポリポットごと鉢に入れて固定してください。
④細菌が入るのを防ぐため、最初の1週間は水を与えません。その後は1週間に1度の割合で、室温程度の水をコップ1杯与えましょう。水苔を使った栽培⑤と同様に、植え替え後の管理をしてください。
病害虫の対策
①根腐れ・・・コチョウランの原種は熱帯植物ですので、乾燥に強い反面、水を与えすぎると根が腐って枯れてしまいます。植え込み材の種類に合わせて、与える水の量と頻度には十分注意しましょう。
②葉焼け・・・葉が直射日光に焼けてしまった状態で、黒くなる症状と白くなる症状があります。日陰に移動して、葉焼け部分を切り取りましょう。
③軟腐病・・・葉の表面や株全体に、湿っぽい褐色のシミができる病気です。進行が早いだけでなく腐ると悪臭を放ちますので、発見したらすぐに切り取りましょう。
④炭疽病・・・カビの一種で、葉の表面に乾いた褐色のシミができる病気です。他の葉にも転移しますので、発見したらすぐに切り取りましょう。
⑤カイガラムシ・・・白くて小さいワラジ形の虫が、葉の裏につきます。見つけたらピンセットやブラシで取り除き、再付着しないよう完全に処分してください。
⑥ハダニ・・・雑草や野菜につく虫で、葉のツヤがなくなって葉の裏側に白斑が生じます。ダニ類は抵抗性がありますので、専用の薬剤を3種類ほど用意して交代で使用しましょう。
コチョウランの歴史
コチョウランは、18世紀中頃に発見された熱帯植物で、原産地は赤道付近の高温多湿地帯です。インドネシア、フィリピン、台湾南部などを生息地としています。学名はファレノプシス(Phalaenopsis=蛾のような:ギリシャ語のPhalaina=蛾、opsis=~に似る)ですが、日本では、花が蝶のように舞う様子を例えた台湾の「胡蝶蘭」という名称が広く使われています。
現在、日本で贈答用に重宝されている純白の品種は、18世紀後半、コチョウランの交配を成功させたイギリスから伝わるアマビリスという原種です。当時のイギリスでは、鑑賞目的の栽培が行われていましたが、アメリカに伝わったのち、営利目的の栽培によって更に交配が進みました。
コチョウラン栽培は温湿度管理が非常に難しいため、高価な植物として上流階級でのみ鑑賞されていましたが、温室栽培の定着と生産技術の向上によって栽培農家が増えるとともに、一般市民にも浸透するようになりました。品種改良も盛んになり、現在までに発見されている品種は25,000種にものぼります。
日本で栽培されているコチョウランは、白、ピンク、リップ(白い花弁と赤い唇弁)が一般的ですが、2012年には千葉大学の植物細胞工学研究グループによる遺伝子組換の品種改良で、ツユクサの色を入れた青いコチョウランが発表され話題となりました。また、市場には白い胡蝶蘭を青や紫で染色したものも出回るようになりました。
コチョウランの特徴
コチョウランの属性は、ラン科ファレノプシス属、多年草・常緑・非耐寒性の植物に分類されており、草丈は20~100cm、花径は3~12cm程度の植物です。原種が熱帯植物であり、乾燥には比較的強い反面、寒さには弱いという特徴があります。
元々は、樹木などの表面に根を張って養分を吸収する着生ランで、水分は空気中から吸収し、栄養分は露出した根から吸収します。夜間に二酸化炭素を吸収し、日中に木漏れ日のような弱い光で光合成を行いますが、直射日光には弱いので注意が必要です。
大きな肉厚の葉、細く長い茎、美しく華やかな花弁を持ちますが、強い香りはありません。自然開花は春になりますが、温室栽培によって1年中楽しめる上、開花期間が1ヶ月以上にも及ぶため、敬意を表すための贈答用として喜ばれています。ただ、子株を出さない単茎性であるため株分けはできず、良好な条件下でも年に3~4枚の葉を展開する程度で、成長は大変遅く、温湿度管理が難しい植物です。
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