ハランの育て方

ハランの育てる環境について
ハランは江戸時代から親しまれている古典的な観葉植物で、育てる環境は基本的には明るい場所で、温度は0度以上が適しています。とても強健で寒さにも強い植物で、寒冷地以外での栽培については地面や路地植えなどの屋外でも大丈夫です。
耐陰性もとても強い直物で、特別な土質を必要とせず比較的どんな環境にも適応し、防寒の必要性もないため栽培は初心者でも容易です。強い直射日光が当たると白っぽくなったり、葉焼けを起こすため、木の下などの日陰や室内が良い育て方です。
斑入りの品種は特に日陰での栽培がおすすめです。霜や薄氷がはる程度の寒さにも耐えることができますが、冬に凍結する寒さが厳しい地域では室内で育てます。鉢植えで育てる場合は、根詰まりに注意して、根詰まりしないように毎年春か秋には植え替えるようにすると良く育ちます。
根は通気性を良くすることが大切です。また、鉢植えの場合の用土は、水はけが良く、通気性のある土が適しています。市販されている草花用培養土を使用するか、赤玉土6、腐葉土4で配合した土などを使用します。乾燥に耐えますが、本来は湿り気のある土壌を好む植物で、
水はけが良すぎる場合は腐葉土などの有機物を加えて土壌を改良することが必要です。葉が傷んでも自然に落ちないため、枯れ葉や傷みのある葉などはその都度取り除きます。葉が増えてきた時を目安にして、2年に1回は植え替えをします。5〜6月が植え替えには適しています。
ハランの種付けや水やり、肥料について
ハランの受粉は、風が通らないために風媒体ではなく、花は昆虫や鳥類から見えない枯れ葉の下にあり、目立たないところに地味に花を咲かせます。地面スレスレに咲くことから、その受粉方法は長い間わからなく、カタツムリなどが花粉を運んでくるのではないかと考えられていた時期もありましたが、
現在わかっていることは、ハランの受粉はヨコエビが行なう説があり、有力な説はヨコエビで、ヨコエビによる受粉は1995年に日本で発見されています。また、ダンゴムシによる受粉説もあります。ダンゴムシを利用する方法の利点は、花を高く持ち上げたり、
立派な花冠を作ったりする必要がないことです。密に生えた根生葉の根元であれば温暖の変化を受けにくく、乾燥からも守られます。強い風が吹く時でも葉の陰になります。ただし、ダンゴムシの移動範囲を考えると、ダンゴムシによる受粉には地域が限定される可能性はあります。
植えつけは、比較的時期を選びませんが、秋か春の時期が理想的です。水やりは、鉢植え、庭植え共に、土が乾き始めたらたっぷりと水やりをし、秋から徐々に水を与えることを控えて、0度以上であれば越冬できるため、冬の水やりは控えめにして乾燥気味にします。
肥料は、植えつけ時には、元肥として緩効性化成肥料を土壌に混ぜます。栽培中の株には12月から2月に冬肥として有機質肥料を与えます。肥料が多すぎると斑入り品種は、斑が消えることがあるため注意します。
ハランの増やし方や害虫について
増やし方は株分けが適しています。植え替えを兼ねて株分けするには3月下旬から4月上旬か、9月中旬から10月下旬で、株を掘って5〜6枚の葉をつけた程度に株分けします。やや密に植えると後に育成が良くなります。ハランの病気は、円星病です。葉に直径5〜10mmの円形の病斑が現れます。
枯れた葉が地面に落ちて、病原菌が土壌で越冬して、翌年も降雨による泥のはね返りなどで植物に感染することが多いです。発病した葉がある場合は取り除きます。円星病を予防するには、チッ素分の多い肥料を多く使用することを控えて、株が蒸れないように風通しを良くします。
円星病の他には褐色斑点病があります。これは葉に直径2〜5mm前後でややくぼんだ淡褐色か褐色の斑点を生じます。この防除法は、風通しや排水をよくして、肥料切れでも発生しやすくなるため、追肥を行ないます。ハランの害虫については、カイガラムシが考えられます。
葉の表面がテカテカ光ったり、ベトベトすることがあります。これはカイガラムシなどの吸汁性害虫の排泄物で、これがカイガラムシが寄生している証拠です。湿度がある場合は、やがてすす病原菌が繁殖して黒くなってくるため注意します。
カイガラムシの成虫は殻をかぶったり、ロウのような物質で覆われているため、退治が難しい害虫のひとつです。体長2〜3mmのカイガラムシは見つけたら葉などを傷つけないよう注意しんがら歯ブラシなどでこすり落とすして、水を散布して葉を洗ったり、カイガラムシに適した殺虫剤で駆除します。
ハランの歴史
ハラン(葉蘭)はスズラン亜科ハラン属の常緑多年草です。名前に蘭という漢字を使用しますが、ラン類ではなく、巨大な葉を地表に立てるように生える植物です。ハランの原産については、中国が原産で、日本には江戸時代の初期に渡来した説や、
ハランは日本自生の植物で日本からヨーロッパに伝わって中産階級の庭に植えられた説など、いくつかあります。ハラン属は約85種が中国、インド東部、ベトナム、ラオス、台湾、日本で発見されており、約59種は中国に分布しており、そのうち54種は中国の固有種です。
庭園の下草として植えられており、斑入りなどの品種があります。ヨーロッパでも植えられており、1936年の自伝的作品の中にイギリス中産階級の象徴として庭のハランが登場しています。常緑樹の下や北側の日陰でも良く育ちます。葉には殺菌作用があり、
料理の仕切りなどにも使用されることがあります。日本では江戸時代に発展し改良が行なわれて、縞斑、中斑、曙斑、星斑など多くの品種があります。3月頃に地面スレスレに球根のような2cm程度の花芽ができ、その後に王冠のような目立たない花が咲きます。
花の受粉についてはヨコエビが有力ですが、ダンゴムシが行なう説もあります。生け花などの花材として良く利用される植物で、葉にツヤがあり、筋が入っており立ち姿がスッとしています。ハランは大量に群生する特性があります。強健で増え過ぎることがありますが、株分けや植え替えなどで株の整理をすることも楽しむためには必要です。
ハランの特徴
ハランは多年草で丈は20〜100cm程度です。耐寒性はやや弱い〜普通程度で、耐暑性は強いです。常緑種で初心者でも育てやすい観葉植物で、日陰でも育ち香りもあります。茎は地下を横にはう地下茎で、葉は薄いのですが硬くてツヤがあり深緑色をしています。
楕円形で長さが約50cmを越えるほど長い形状です。群落を作り、地面から大柄な葉が立ち並ぶように生育します。日陰で手入れをしなくとも栽培でき、良く育ちます。花は紫色で多肉質です。花径約4cm程度の壺型の花が3月から5月頃に地下茎が出て地面スレスレに咲き、花が地面にめり込んだような格好です。
花は葉に隠れて目立たず、気がつかないこともあります。花の後は、甘い香りの果実ができて、中に半透明の白い種が並びます。根茎が長く伸びて大きくてツヤのある葉を地上に展開し、関東地方以西では放任しても良く育ち、戸外で冬超しも可能です。
ハランは地上スレスレに咲くため、カタツムリやナメクジなどによって花粉が媒介されると考えられていましたが、1995年に日本でヨコエビ類のニホンオカトビムシが花粉を媒介することがわかりました。生息地は中国南部と言われてきましたが、中国で野生はみつかっておらず、
九州南部の宇治群島、黒島、諏訪之瀬島が本来の生息地になります。刺身やお弁当の中に緑色のプラスチック製の葉の形をした仕切りのシートがありますが、これはハランを飾りに使用していた名残です。ハランには殺菌作用があり、弁当や寿司に添えられていました。現在でも高級料亭や寿司屋などでは本物のハランを使用することがあります。
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